ナンテコトナイ







口元のピアスを見た。
ストローを噛む口元を見た。

無意識に目で追っていた。


「…なんだよ、気持ち悪ぃな」

睨まれる。
当然だ。

睨む瞳が。
太陽の光に透ける髪が。
喋る度上下する喉元が。
色素が薄くて綺麗だと思った。


「飲みたいのか?」

見続けていたら、目の前に紙パックがつきだされた。
噛み潰されたストローが生々しい。

「……ぁ、」

手を出したら呆れられた。

「ばぁか。
新しいのやるよ」

冷たい紙パックが投げて寄越される。
そっちがいい。なんて言えるはずなく、大人しく一口飲んだ。

「あま…」

別に文句を言ったつもりはなかった。
が、彼にはそう捉えられたらしい。

「いらねぇなら返せ」

手元から紙パックが奪われる。
すぐに彼が飲み干してしまった。

「ぁ…」

「なんだよ。もうやらないからな」

そんなことはどうでもいいから、小さく頷く。

自分から彼へと渡った紙パックが、音を立ててへこんだ。













間接キス




自分だけが、意識している












お粗末様でした。




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