君が好き




「やっぱ女は胸だな」
「いやいや、尻も捨てがたい!!」
「俺は断然、脚だね」

「…なにしてんの、あれ」

昼食を買って教室に戻ると、やけに騒がしい。
教室の中心に輪を作って、熱弁を振るうクラスメイトを横目に、興味なさそうにヨーグルッチを飲んでいる神崎に声をかけた。

「女の好みの話」
「…あぁ」

よく見れば、傍にグラビア雑誌が転がっている。
「ふーん…」
手に取って適当にページを捲ってみた。
胸だとか脚だとか。
それは好みとはまた違う話な気がするが。
「強いて言うなら、俺は脚派だなー」
と、誰に言うでもなく呟いた声は、運悪く、騒がしく飛び交う声の隙間だったようだ。

「脚かー」
「そういや、モテそうなのにそういう話きかないよな」
「夏目の好みってどんな?!」
急激に、話題の中心人物にされてしまったようだ。






「そうだなぁ…
活発な箱入り娘、とか」
「んだそれ。邦枝とかか?」

その手の話はしたことがない。と、神崎も話に加わった。

「まぁ、俺より小柄で」
「そりゃそうだろ」
181越える女はあまりいないのではないか。
「で、小柄な分よく動くってのが、見てて飽きなくていいよね」
小動物系ということか。
あの、列怒帝留のエアガン持ってるチビみたいなやつか。と顔を思い浮かべている間に、夏目の話は進んでいく。

「純粋で、ちょっとお馬鹿なくらいがいいな」
パー子みたいなやつか。
今度はすぐに顔が浮かんだ。

「甘いものに目がなくて、アクセサリーとか好きだと、プレゼントしやすくていいよね」
「お前、尽くすタイプなのか」
少し意外だ。
夏目はなんというか…好きな相手も虐めそうな気がする。
「んー、どうかな。
でも好きなこは喜ばせてあげたいし、プレゼントで気をひけるなんて、お手軽じゃない」
……やっぱり夏目は夏目か。

「で、髪は明るくて短め、かな」
およそ女みたいに長い髪を掻きあげながら、夏目は笑う。

「つーかあれだな。やけに具体的だな」
「うん。そうかもね」
しかし、全部に当てはまる人物が思い浮かばない。

「俺の知ってるやつか?」
「さぁ。どうだろうね」

夏目は曖昧に笑ってみせた。
肯定なのかもしれない。







「あ、そうだ。神崎クン」
「ん?」
あまり多いとも言えない、知り合いの女子の顔を思い浮かべていたら、夏目がコンビニ袋を目の前にぶら下げるものだから、思考を中断する。

「コンビニで新しいお菓子出てたから買ってきたんだ♪食べる?」
「おぅ、さんきゅ」










神崎さん……


城山を筆頭に、3-Aの面々はため息と共に哀れむような視線を神崎へと向けた。






title:"タイプを聞かれて相手の特徴を言った"
by確かに恋だった





知らぬは本人ばかりなり。という話。
神崎くんは普通に、夏目の趣味変わってるなー。か、趣味悪ぃくらいに思ってるww
姫川からのプレゼントとかはすっごい警戒心で訝しむけど、神崎一派からは無条件に餌付けされてるといい


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