MY SWEETNES




「はじめ」

「………」


名前を呼ぶと、俺より低い位置にある肩が揺れた。
聞こえていないわけではないらしい。
しかし、先ほどから何度呼んでも、こちらを振り向こうともしない。


「なに、どうした?」

仕方なく優しくきいてやったのに。
あろうことか、寄せた顔を押し退けられた。
しかも両手。

「…近寄るな、ばか」
「おい」

なんなんだ一体。


元々敵対する、所謂ライバルだった俺たち。
会えば喧嘩するような間柄だったのだが、ある時からこいつが可愛く見えて仕方なくなった。
自分でもおかしいと思ったし、勘違いかと女をばかみたいに抱いたりもした。
けれど、こいつの顔が頭から離れなくて。
結局、自分の感情認めて。
そうなれば後は手に入れるのみ。

使えるものは全部使って。
できることは全てやって。
そうして、紆余曲折あって、晴れて恋人同士になったわけだ。

だがしかし。

気合い入れて迎えた初デートで

「近寄るな、ばか」

ときた。



ハーフパンツから覗く脚に欲情したのは認めるが、まだ触ってもいない。
黙ったまま、理由も話そうとしないやつに焦れて、無理矢理頭を掴んでこちらを向かせた。
足癖が悪いもんだから、先に太股に両足を乗り上げて固定する。
腕が全力で顔面を押し退けてくるが気にしたら負けだ。
こちらも全力で顔を固定する。

「…ックソ。しつけぇなっ…」
「そりゃ、こっちの台詞だっつーの。
っいい加減諦めろ」
「……っぅわ!?」

顔面を押さえ付ける掌に舌を這わせてやると、呆気なく攻撃は止んだ。
悔しそうに歪む顔がたまらない。なんて言ったら、また暴れだすだろうからやめておく。

「で。どうしたんだよ、一体」
「…別に」
「俺、結構今日楽しみにしてたんだけど」
「………」
「お前はそうじゃなかったわけ」
「…別に、そういうわけじゃ…ねぇけど」

どうも歯切れが悪い。
視線も未だに合わせてもくれない。

「じゃあ、なんなんだよ。
いい加減怒るぞ」
「………」


……拉致があかない。
溜め息をひとつ吐いて、一度気分転換でもしようと立ち上がった。

「……ぁ」
「ぁん?」
小さく挙げられた声に見下ろすと、縋るような目線とかち合う。

え、なに。なんでそんな泣きそうな顔してんの。


「はじめ…?」

とりあえず座り直すことにして、視線を同じ高さに合わせてやる。
また目を逸らされた。

「なに、どうしたいの、お前」
呆れた声を出すと、また少し淋し気に瞳が揺れる。

「………
怒んねぇから、言ってみ」






「…それ」

たっぷりと間をあけて、やっと口を開いた。

「ん?」
「…なんか姫川、いつもと違うし」
「………」
「なんか、優しいし」
「………」
「なま、え…呼ぶし」
「……え」
「…どう接っすりゃいいか、わかんねぇ」





………なんだこの可愛いイキモノ!!!

やばい、めちゃくちゃ抱き締めたい。キスしたい。

欲望に忠実な身体は、無意識に目の前の体を抱き締めていた。
また暴れそうになるのを、二の腕ごと抱き締めて封じる。

「…はじめ?」

試しに耳元で名前を呼べば、面白いほど腕の中の体が震えた。

「照れてんの?」

耳まで真っ赤にした姿が可愛くて仕方ない。



「…っしょうがねぇだろ!!
お、お前と違って…こういうの、初めてで……っ
慣れてねんだ、よ……」

「……っ」

抱き締める腕に力を込める。
なんだ、もうお前、俺を萌え殺す気か!!

「……はじめ」
「……っ」

「俺も…名前で呼んで」
「……ぅ、ぁ…








―――っ、たつ、や?」





















目の前の真っ赤な恋人に

恥ずかしがる暇もないほど

繰り返しキスをした。










title:"(台詞)仕方ないだろ、はじめてなんだから"
by確かに恋だった


皆様のリクエスト?にお答えして
幸せな姫神を書いてみたんですが…

…しあわせ??
結局前半、姫川ボロクソでした←←

世間様の甘い、幸せvな空気が書けない
ほんと、すいませんorz≡

幸せって、なんだろなー←

ラヴラヴ書けるよう、ちょっくら勉強してきます≡(逃




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