nothing more about u




いつからだろう。
君のことを特別だと思い始めたのは。
ずっと傍で君を守れたらって。

だけど、神様ってやつは本当に性格が悪い。
自分の気持ちに気付いてしまったからこそ


君の視線の意味に、気付いてしまった―――








今日も彼は眠そうな顔で教室に入ってきた。
おはよう。と声をかければ、言葉なのかよくわからない音で応える。
音を立てて椅子に座ったところで、まだ水滴のついた紙パックを目の前に差し出した。
彼のお気に入りの乳酸菌飲料。
顔に似合わず、甘いものが好き。そんなところもとても可愛いと思う。

「おぅ」

それを当然のように受け取るのは、これが毎日の習慣だから。
お礼の言葉なんていらない。
当たり前として彼と俺の中に存在していればいいのだ。



暫くすると、寝る。と一言だけ告げて、彼は机に突っ伏した。
彼は基本的に、人前で眠らない。
それは、彼の現在の立ち位置によるもので。
比喩ではなく、いつ寝首をかかれてもおかしくない人間だからだ。
そうしてそんな彼が、自分――正確には自分ともう1人、常に彼に付き従う城山――の前でだけ眠るという事実が俺を付け上がらせ、同時に虚しい気持ちにもさせる。
"仲間"である以外の何物でもない自分。
彼は確かにそれに"執着"してくれるが、それは俺が求めている"執着"とは違う。

それだから俺は、完璧な忠誠ではなく、気儘に振る舞ってみせるのだ。
少しでも、彼の心を乱せれば、と。
絶対的な安心感と、ほんの少しの疑心。このバランスが心地いい。







「………っ」

突然鳴り出した携帯に、まだ浅い眠りから急に引き戻された彼は、目を大きく開いて顔を上げた。
携帯の画面を確認すると、大袈裟に眉根を寄せる。
不機嫌な顔を作ってはいるが、その奥の感情が自分には手に取るようにわかった。
ずっと彼を傍で見てきたから。
今となっては、そんなもの解りたくもない。







「…よぅ」

彼の携帯が震えて暫く。
教室の扉がゆっくりと開き、やけにスタイルのいい長身が覗く。
趣味の悪いサングラスに特徴的な髪型の彼。

「迎えにきてやったぜ」

なんでテメェなんかと…。と悪態吐きながらも彼は立ち上がり、いけすかない男の下へと歩いていく。
曖昧な笑顔で彼を見送った。






男を見つめる彼の瞳に映る色に
吐き気がした。















気付きたくなんてなかった。

彼の視線の意味なんて。

知りたくなんてなかった。

こんな感情なんて。
















―――それでもきっと、君が好き


















title:"君の視線の意味に、気付いてしまった"
by確かに恋だった


夏→神です。
あんまり片想いとか、幸せじゃないのは苦手なんですが、なんか急に夏→神が降りてきました。
ちょっとシリーズにして書いていく予定です。
最後は幸せになるといいな。。。




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