TRAP




「アイス食いたい」

姫川の部屋で二人。
ソファに沈み混んでテレビを見ていたら、突然神崎がそう言った。

「………」

ただの呟きなのか、それとも意思表示なのか測りかね、姫川は応えず、そのまま次を待つ。

「アイス食いてぇ」

しばらく待つと神崎は、またただそれだけを口にした。



え、なに。買ってこいってこと?

チラと神崎に目をやれば、真っ直ぐに見つめ返される。

「……え、なに」

堪らず問うと、視線は合わせたまま、不思議そうに首を傾げられた。
可愛いな、ちくしょう。


「アイス、出ねぇの?」

いやいやいや。
なに当然出てくるよね。みたいな顔してんだよ。

「俺はドラ●もんか!!」

「…なんだ、ないのかよ」

ツッコミはスルーされ、更に落胆したような表情を浮かべられ。
凹みたいのは俺の方だ!!!


「……買いに行きゃ、いいじゃねぇかよ」
怒鳴りたいところをなんとか理性で押し留め、最善と思われる策を教えてやったにも関わらず。

「やだ。めんどい」

あぁ、そうですか。
一蹴された。



「じゃあ諦めろよ」

「………ん」


え、なに、なんだこの可愛い生き物!!

至極残念そうに眉根を寄せ、小さく頷く神崎に、知らず額に汗が滲む。
いつもなら、それが明らかに理不尽な要求だろうが、姫川が断れば機嫌を損ね、逆ギレよろしく飛び掛かってくるところだ。
我慢する姿に心拍数はあがりっぱなしだが、平静を装い、顔を覗き込む。


「あ、諦めるのか?」

「…おぅ」

仕方ない。と呟く顔はしかし、やはり、ひどく悲しげで。


ったく……








「……何がいいんだ」



「?」
「アイス。
なんでも買ってきてやる」

一体自分は何をしてるんだ。
自身の行動に納得いかないまま、満面の笑みを浮かべる珍しい神崎に見送られ姫川は、コンビニに向かうべく、エレベーターのボタンを押した。














「夏目ー」
「どうだった?」
「お前の言った通り、大人しく我慢してみたらアイス買ってきた」
「あはは、…!!」



「……!?!!??」



まんまと嵌められる姫ちゃん。
いっつもワガママな神崎が素直だと逆に落ち着かないといいwww
なんだかんだで神崎が可愛くて、何かしてあげたくて仕方ないんだろうな〜ニヨニヨ




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