教室の窓際一番後ろは、生徒にとっての特等席。

教師の目にも留まりにくく、退屈な時には空やグラウンドを臨み、窓から差し込む日差しに眠気を誘われる。

昼寝には格好の場所だ。



休み時間、昼食を終えてやけに静かな目の前の彼を見ると、瞼が今にも閉じそうで。

「眠いの?」

優しく訊けば、無言で頷いた。

普段は凶悪と表現される顔も、ふわふわと現を彷徨っていて、幼く見える。

喉に刺さったら危ないから、銜えたストローをそっと外してやる。

「寝てなよ。俺、ここにいるから」

「……ん」

そのまま机にゆっくりと突伏すると、時期に小さな寝息が聞こえてきた。

無防備に眠る姿は、誰にでも見せる姿じゃないとわかっているから。

できるだけ自分の前では、そうでいて欲しいと願う。

窓から差し込む日差しが暖かいとは言っても、季節はまだ冬だ。

上着をそっと肩からかけてやると身じろいで、腕に顔を埋めて更に小さく丸まった。

「寝てるとほんと、幼いよね」

彼を起こさないように、声を殺して笑う。


「どうしたんだ?夏目」

彼の好物を両腕いっぱいに抱えて戻ってきた城山が不思議そうに覗き込んできた。

振り返りながら、人差し指をそっと唇に当ててみせる。

「静かに」

声を出さずに唇だけでそう動かすと、事情を察した城山は、紙パックをひとまず自分の席へと運んでいった。




窓際で、暖かな日差しをいっぱいに浴びて眠る姿にまた視線を戻す。

金色の髪に光が透けて、キラキラと煌めいている。

彼はきっと、自身がこんなに綺麗だってことを知らない。




「おやすみ、神崎くん」






特等席で眠る彼を眺めて過ごす昼休み。

彼の隣。

ここが俺の、特等席。












title:ひなたの特等席(猫的であってほしいお題より)
by MEMO



お眠な神崎くんを夏目と城山が微笑ましく見守っていればいい。
私の中での夏目は、変態か詩人ですwww




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