03
鈍い傷みが左脇腹に走った。
全くと言って良いほどその動きを捉える事が出来なかった。
「お前っ・・・」
「―――この目は便利でね。様々なものを見通せるのだよ」
―――バッ。
血飛沫が舞う。
地面が赤く染まる。
「がはっ・・・」
一気に短刀を抜かれた。
少しずつ、意識が朦朧としてきた。
「この程度では死ねないんだろう?」
冷徹な声が耳に響く。
身体に力が入らない。
ゆっくりと、青風の身体が倒れる。
「・・・全く、手間とったよ・・・」
無造作に青風の襟の辺りを掴むと、彼は雨の中をずるずるとひきづって行く。
「・・・れ・・・は・・・・・・」
何故、自分は今生きているのだろうか。
あの日、とうに終わるはずだった命なのに。
「―――・・・私もまだまだ甘いな」
霜惺が何を呟いたか、もはや青風の耳には届いてはいない。
彼の目に浮かぶのは、懐かしき人々だった。[ 5/23 ] [*戻る] [次へ#]
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