01
雨がザアザアと降っている。
夜半過ぎ。
さすがにこの時間帯になると、都と言えど役人も徘徊人もいなくなる。
微かに霧が辺りを覆っており、決して視界は良いとは言えない。
そんな中を、黒い影が不気味な音を立てながらゆっくり、またゆっくりと歩みを進めて行く。
ギギッと刃が地面に擦れる様な鈍い音と、足音と、雨音がこだまする。
何も聞こえない。
自分が今何処にいるのかすら分からない。
不意に、彼は足を止めた。
目の前に何かいる。
「―――・・・ほう。自我を無くしたか」
聞き覚えのある声に青風は目を見張る。
「その返り血は人のものか?それとも妖のものか?」
彼は冷笑を浮かべる。
「―――人のものなら・・・」
青風はバッと体制を低くして刀を抜く。
「祓わねばなるまいよ」
水飛沫が空を舞う。
一瞬の出来事に青風は目を見開いた。
自分の刀を押している短刀。
それを構えているのは霜惺だ。
「お前っ・・・!?」
「本当はずっと隠しておこうかと思っていたのだがね・・・貴様相手にそれは厳しいと思ってね」
青風の赤い瞳が敵意を帯びる。
普段なら透き通った青い瞳が今は赤に染まっていることに青風は気付いてはいない。
返り血で汚れた白い衣を翻しながら刀を振るう。
しかし、それらは全て霜惺に軽く払われてしまう。
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