07
* * *
夜明け前。
冷たい床の上を青風は歩いていた。
目的の部屋の前まで来ると、彼は片膝をついて中を確認してから室内へと足を踏み入れた。
この屋敷は都の邸と造りが違う。
どちらかと言えば青風はこういった造りの方が慣れている。
床の前まで来ると、昨夜からずっと目を覚まさず臥せっている主を見下ろす。
血が足りていないのか顔色は青白く死人の様だった。
「龍作様・・・」
呼びかけても目覚める気配はない。
そっと手を伸ばしかけて止めた。
この傷を癒すこともできる。
完全に治すことも。
けれど、それをしてしまっては彼は闇に近づいてしまう。
自分と同じように鬼にするわけにはいかない。
一度伸ばした手を引っ込めると、青風は立ち上がり部屋を出た。
* * *
朝日が昇り始めたころ、舞は龍作のいる部屋へと向かっていた。
ふと、空を見上げれば朝日が自分を照らし始めていた。
龍作は目覚めただろうか。
不安を抱きながらも歩みを進めると、丁度龍作の部屋から出てきた青風を見つけた。
「青風・・・」
茫然と呟いたその声を聞き、青風は勢いよくこちらを振り返った。
恐らくこの時間帯なら誰もここへは来ないだろうと思っていたのだろう。
「えっ、あ、舞姫様・・・」
「そんなに驚かなくてもいいのに・・・」
「そうですよね・・・」
むすっとする舞姫に青風は思わず苦笑を浮かべる。
本当は青風を怒鳴り散らしてもおかしくはないのに。
この姫はそんなことはしない。
以前と変わらず、接してくれる。
「龍作、起きてた?」
「いえ・・・眠っておられます」
「そう・・・」
舞は少し残念そうに龍作の眠る部屋の方を見た。
「舞姫様・・・俺っ・・・!」
そんな舞を見て青風は耐えきれなくなり、舞に向かって叫んだ。
「青風・・・私に貴方をどうこうするつもりはないわ」
「しかし・・・!」
「龍作が許すと言ったなら、私も許す」
「舞姫様・・・」
青風は泣きそうな顔で舞を見る。
対する舞はとても落ち着いた静かな瞳をしていた。
「言い訳をするつもりはありません・・・俺は、龍作様を・・・傷つけた」
「・・・いつかの光景と重なった?」
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