02
額を伝う汗を拭いながら舞姫はふと、自分の前を歩く霜惺の背を見上げた。
彼とこんな風に話した事はあっただろうか。
元々、たまに邸にやってきてはよくみんなで遊んだ。
もちろん仲間だとも思っている。
けれど、いつも彼の本心は見えない。
それが今、少し、垣間見えた気がした。
普段の彼もまた素なのだろう。
「私、あなたのこと少し見直したわ」
「それは良かった。さあ、着いたよ」
くるりと首を振り返らせて笑う彼に舞姫は「え?」と首を傾げる。
見れば目の前には大豪邸があった。
おかしい。
先程までは何もない山中だったはずなのに。
訝る舞を見て霜惺は苦笑した。
「結界を越えたのさ。気付かなかっただろう?」
そう言って苦笑する霜惺に小馬鹿にされた様な気分になって舞姫は霜惺を追い越して先に進む。
「誰の邸かは知らないけれど、これだけ優れた結界を張れるなんて・・・」
そこまで言いさして舞姫は目を見開いた。
誰かいる。
目先の邸の門が開いており、邸の中が見える。
良く目を凝らせば邸の庭で誰かが薪を割っている。
木の影から見える白い衣を見て、舞姫は駆け出した。
その後ろ姿をあきれ混じりに見つめながら霜惺も邸へと向かう。
「やれやれ、世話の妬ける」
邸の門まで一気に駆けると、そこで舞姫は息をついた。
乱れた息を整えると、勇気を振り絞って見慣れたその後ろ姿に声をかける。
「―――青風」
はっと息を飲んだのが分かった。
それまで薪を割っていた手を止めると、舞姫が青風と呼んだ人物は一気に邸へと駆け出した。
「あっ、ちょっと・・・!」
「姫様っ―――」
慌てて追いかけようとしたら近くから控えめな声か聞こえた。
控えめではあったけれど少し悲痛さを含んだ声で。
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