01






―――貴族、桜木邸。





太陽の光が室内に射し込んでいる。


春ももう終り、そろそろ都は梅雨入りしそうだ。


鏡台と向き合ったまま、この邸の姫は苦悩の表情を浮かべていた。


「よねー。これ、やっぱり辺じゃない?」


彼女の名は、―――桜木舞。


人々から舞姫と呼ばれ、良くも悪くも噂が絶えないおてんば姫である。


彼女がひとたび声を発すればすぐさま掛けてくる女房の姿がある。


「はいはい。いかがなさいました?姫様」


長い前髪を両側にわけた凛とした面差しが印象的な舞姫御付の女房の―――よね、だ。


「だから・・・。これ、辺じゃない?」


「これ?着物ですか?それとも頭?」


「頭の方よ!!・・・というか髪!!これ、かんっぜんにはねてるじゃない!!」


「はぁ・・・。そう言われましても・・・。御髪をとかしましょうか?」


少々呆れ気味の女房に舞姫はキッと睨みつける。


「とかしたくらいじゃ直らないわ!!・・・て、あ・・・・・・」


いきなり間抜けな声を出したかと思えばそのまま御簾の向こうを見据えて固まってしまった主の行動を不信に思い、よねもそれに習って御簾の向こうを見る。


「まあ・・・」


御簾の向こうからちょうど青年が顔を出した。


「―――よっ!久しぶりだな」


「―――龍作!!」


先程まで不機嫌だった舞姫の顔が一瞬で笑顔になる。


そんな主を見てよねは小さく苦笑した。


「・・・て、ちょっ・・・姫様!?龍作様に抱きつかないでくださいっ!!」


「いいじゃない。挨拶よ、あ・い・さ・つ」


「そんなにはっきり言わなくても聞こえてます!!いいから離れなさい!!龍作様も放しなさい!!」







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