07
段々と青風の瞳が正気を帯びてきた。
止めどなく溢れる血。
頬に、衣に飛び散ったこの血は誰のものだ?
答えは当に出ている。
この光景が全ての答えだ。
「りゅ・・・さく・・・・・・」
一気に血の気が引いて行く。
「青風、大丈夫だ。俺は、このくらいじゃ、死なない・・・俺は・・・」
左脇腹を押さえながら龍作は後ろに倒れる。
青風の目が大きく見開かれる。
―――俺は、俺は・・・また・・・・・・。
「ゔあ゙あ゙あ゙ああぁぁぁぁぁァァァ――――――っ!!」
叫び声がこだました。
「青風っ――――――!!」
龍作の叫びも虚しく、人々が逃げ出す中、青風も社から出て行く。
舞姫はその光景をただ見ている事しか出来なかった。
「龍作っ・・・!!」
「くっ・・・大丈夫だ・・・これ、くらいじゃ・・・死ねない・・・」
こんな時でさえ、いや、こんな時こそ動かなければならないのに。
結局自分は何もできない。
「血止めしなくちゃ・・・」
「龍作殿・・・まだ、力は・・・残っておりますか・・・?」
「巫女・・・様・・・?」
呆然とする舞姫の前で巫女は龍作の下まで茨草の手を借りてやってくると傷口に手をかざした。
「巫女・・・っ!!」
「大丈夫です、私は・・・死ねない身」
自らも慢心相違な巫女を龍作は睨みつける。
「あんたこそ・・・」
「これから・・・永の眠りに着きます。きっと・・・目覚めるのは数年から数十年後。この身は・・・朽ちません。さぁ・・・手を・・・」
言われるがまま龍作は傷口に手を伸ばしてあるだけの力をそこに集中する。
巫女が霊力を込めるとその手は光を帯、少しずつ、血が止まっていく。
「・・・ふぅ・・・。血止めだけはしました。後は・・・。舞姫様・・・門を潜れば都へ行けます・・・。申し訳、ありませんでした」
「・・・謝らないでください。力不足は私です」
「・・・貴女は、まだ・・・知らないだけです。自分の持っている力を・・・」
巫女は白い指を扉の方へ向ける。
「お行きなさい。全ては・・・そこから・・・」
「―――巫女っ!?」
傾ぐ巫女の身体を茨草が慌てて支える。
「茨草・・・申し訳・・・ありません・・・。また、寂しい思いをさせてしまう・・・。・・・・・・後のこと、頼みました・・・よ・・・?」
涙を浮かべながら薄く微笑む彼女に、茨草は泣き笑いを浮かべる。
「・・・はい。必ず・・・」
それを聞いて巫女はゆっくりと瞼を閉じた。
「――――――舞姫様。また、お会いしましょう。龍作様は、助かります」
「―――霜月。また・・・来なさい。待ってるから・・・茨草さん」
気を失った龍作を担ぎながら舞姫は社の外へと姿を消していった。
それを呆然と見ていた茨草は頬を涙が伝ったのをようやく知った。
「舞姫様・・・青風を、お願いいたします」
その呟くようにか細い声は、世闇の中へと消えていったのだった・・・―――。
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