04
風が竹を揺らす。
ここへ来たのは、何故だろうか・・・?
舞姫の一件以来、ここへ来る事もなかったというのに。
青風は、自分の定位置である大きな岩を見る。
ここは嫌いではない。
だが、ここにいると必然と思い出す。
いや、どこにいても同じか。
ふっと鼻で笑う。
そっと己の手を見れば、今も蘇るあの日の光景。
今更思い出したのは昨夜言われたあの女の言葉か。
あの女の発した言葉は、青風の心を抉るようにして過去の記憶を呼び起こした。
彼も、昔は人だった。
山に囲まれた豊かな田舎で父と二人暮らし、刀鍛冶を生業としていた。
当時の青風に友人と呼べる者は二人。
黒影という変わった名の少年と霞という名の地主の娘だ。
三人とも同い年ということもあってよく遊んでいた。
青風からしてみれば一方的ではあったが。
それでも、毎日が楽しくて、心地よかった。
そんなある日、青風が父の使いで都に行く事になり、帰ってきた時には、村は一面火の海だった。
村人は無残にも切り殺され、女子供容赦なく切り殺されていた。
生き残っているものも数名いたが、皆酷い重傷だった。
そんな中、必死に家までたどり着いた青風を待っていたのは、深手を負って今にも息絶えそうな父と、同じく深手を負った霞だった。
二人とも地面に倒れていた。
そして、駆けつけた青風が見たのは、自分が都へ赴く前に拾った妖刀に身を乗っ取られ、あげくいいように使われて村人を殺した黒影の姿だった。
そこで、その時、青風も一度死んだ。
黒影と戦うも最後は心臓を貫かれた。
そして、様々な思い、怒り、憎しみ、全てを棄て切れなかった青風は再び目覚めた。
―――妖怪として。
[ 24/47 ][*戻る] [次へ#]
[目次]
[しおりを挟む]
感想を送る


(c) 2011 Kiri
下記は宣伝です。