01





「ふぁーあ。眠た・・・」


大内裏の一角。


歩きながら龍作はあくびをもらしていた。


どういう訳か昨夜良く眠れなかったのである。


チラリと背後を見る。


すっかりしょぼくれた青風がいた。


「まったく・・・誰かさんのせいでよく眠れなかったなー・・・」


「だからすみませんって謝ったじゃないですか。いつまで拗ねてるんですか?少しは舞姫様のサッパリさを見習ったらどうです?」


「―――お前、俺がねちっこいって言いたいのか?」


「はい」


「まったく・・・少しからかっただけだっていうのに・・・」


「―――全くだね。君のねちっこさは昔から変わらない」


「「―――げっ」」


二人揃って横から現れた人物に思いっきり顔を引きつらせる。


「何だい?二人揃って同じ顔をして。そんなに仲がよかったとは知らなかったよ。はぁ・・・私のよ心が痛むね」


衣のすそで目元を隠しながらわざとらしく溜息をつく師に龍作もわざとらしく溜息を吐いた。


「はぁ・・・。全く、貴方も毎回毎回飽きませんね」


「こうでもしてないと溜まりに溜まったストレスで何をしでかすかわからないからね」


「そうですね。貴方ならムカついた相手に嫌がらせしそうですもんね・・・。はぁ・・・こんな師匠を持つと弟子が大変だ」


「君はもう弟子ではないだろう?」


閉じた扇を自身の顎にペシペシとあてながら霜せいは仏頂面で龍作を見る。


「そういえば、昨夜、どっかの誰かさんはどっかの邸の屋根の上で暴れまわっていた様だね・・・」


「「・・・・・・え」」


「それでどっかの誰かさんは寝不足みたいだがねー・・・」


「あはははは・・・。へー・・・どっかの誰かさん。へー、そうなんだー」


「作り笑いが下手すぎるな」


そして、一歩足を前へ踏み出すと、目を細めて霜せいはまるで弟子を諌める様な口調で呟いた。


「―――妖を信用するなと私は教えたはずだが?たとえ・・・それが己が式でもな」


――――――・・・ゆめゆめ、忘れる事なかれ。


幼い頃、脳内に記憶された何かが反映する。


龍作はぐっと拳を握る。


「・・・・・・わかってますよ。でも・・・俺は・・・」


「―――誰も貴様の意見など聞いていない。私はただそう言っただけだ。守る守らないはお前の勝手だ。だが・・・道を踏み誤るな」


鋭い目つきで睨まれて。


強い語調で念を押されては、龍作はこの師に逆らえない。




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