06

「―――覚悟なさい!!大妖王!!」


前方に青風によって傷つけられた大妖王が悶えているのが見えた。


「―――だぁぁぁぁぁあああっ!!」


二人によって刀が振り下ろされた。


『ぐぅぁぁぁあああっ!!』


本来の姿を取り戻し始めていた大妖王の姿が徐々に消えていく。


「・・・やった・・・か・・・」


辺りを満たしていた瘴気も徐々に消えていき、元の屋敷の姿に戻っていく。


「・・・朝?」


部屋を朝日が照らしてきて少し眩しく思う。


「朝?・・・ってことはいつの間にか一夜明けちまったのか!?」


龍作は目を見開いたまま中庭に出て驚愕している。


無理も無いだろう。


誰もが思わなかったことだ。


そして・・・。


「・・・ん・・・?舞・・・?」


「お父様!?・・・大丈夫?しっかりして!!」


「おいおい、あまり大きな声を出さないでくれ。頭が痛い」


「・・・よかったぁ。よかったぁ・・・いつものお父様だ・・・うっ・・・」


「え!?ああ・・・おい!!これはいったい・・・。どういして泣いているんだ!?」


「お父様のばかー!!」


「えぇぇぇええ!?ちょ・・・ああ、おい、誰か!!なんとかしてくれ!!」


その様子を見て龍作と青風は微笑んだ。


だが、喜んでばかりもいられない。


「―――舞姫」


青風が舞姫にそっと声をかける。


「―――何?」


本人もだいたい予想できていたのか、帰ってきた声はかなり不機嫌そうなものだった。


「・・・少しこっちに来てくれ」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかったわ」


だいぶ間を置いてから舞姫は頷いてゆっくりと青風について部屋の奥へと向かう。


それには龍作もだまってついていった。









青風につれられてきたのは、部屋の一番奥だった。


黒い布がぼろぼろになって辺りに散らばっている。


「・・・・・・っ・・・」


舞姫はその場に両膝をつく。


「・・・っ・・・うっ・・・おにい・・・さま・・・」


そっと黒い布をどかす。


そこには、家を出て行った時のままの姿の兄がいた。


真新しかった旅装束は血で汚れ、目は閉じたままもう二度と開かない。


「・・・・・・奴に体をのっとられて生きていたものはいない」


青風は静かに事実だけを述べていく。


「・・・だから・・・」


「・・・も、いいの・・・。もう、いいの」


舞姫の頬を涙がぽろぽろと伝っていく。


「兄様・・・。―――ありがとう」


すっと舞姫は天へ手を差し出す。


天を見上げる舞姫を龍作はそっと支えた。











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