05

「・・・どういう・・・ことだ?」


『・・・・・・クッ、クッ。その刀は貴様に到底扱える様な代物ではない。自分でもそれを分かっているのだろ?』


どろりとした腕が、長い爪が水龍を指差す。


怯んではいけないのに、恐れてはいけないのに・・・身体が動かない。


『貴様もそうとうの霊力を持っているようだな』


「・・・なっ」


大妖王の手が龍作の心臓目掛けて伸ばされる。


「・・・・・・甘いっ!!」


それを龍作が寸での所で刀で弾き返す。


なんとか動く事ができた。


今、こいつと初めて退治して改めて思った。


人とは、いや、自分はこんなにも心が弱かったのか、と。


だが、強さだけを求めてもだめなのだ。


人には、時には優しさも必要だ。


だが、妖に心を許してはいけない。


「―――・・・師匠、貴方の言いたい事が少しだけ分かったような気がしますよ」


龍作の頬を冷や汗が伝う。


刀を握る手にもじっとりとした嫌な汗が滲んでいる。


ぎりっと歯噛みして、刀を握る手に力を込める。


「・・・・・・っ!?」


不意に、ふわっと何かが目の前を舞った。


桜色のそれは、舞姫の衣だった。


そっと刀を握る自分の手に舞姫の手が重ねられる。


「―――大丈夫」


「・・・・・・え」


「―――大丈夫よ。龍作は一人じゃないわ。私達がいる」


龍作の目を見て舞姫は薄く微笑む。


その瞳は力強く自分を見つめてくる。


何故だろう。


助けに来たのは自分のはずなのに。


舞姫に大丈夫だと言われただけでこんなにも安心できるとは・・・。


「・・・俺もまだまだだな」


龍作は舞姫に聞こえない様にぽつりと呟いた。


「え?何か言った?」


「いや・・・」


「―――そうですよ。龍作様」


不意に背後には薄く笑みを浮かべた青風がいた。


白い衣に大量の血が付いている事から、おおかた敵は片付けたのだと知ることができた。


「援護はします。最後はお二人で決めてくださいね?―――さあ」


言うが早いか青風は囮になるべく先に突っ込む。


龍作は一度目を閉じてからゆっくりと瞼を開く。


「―――わかった。よし、行くぞっ!!」


「そうこなくっちゃ!!」


舞姫がぎゅっと手に力を込める。






















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