03

「無駄だよ、舞姫。私の妖気を吸って無事な者はいない」


狂ったように笑う兄を舞姫は睨みつける。


「―――終わりだ」


スッと手を前へ掲げると、地響きと同時に見たことも無い様な悪鬼が大量に姿を現した。


・・・と、同時に物凄い爆音が室内に響き、何か白いものが転がってきた。


「舞姫様!!ご無事ですか・・・っ!?」


「・・・・・・せ・・・青風?」


思わぬ訪問者に舞姫はきょとんとする。


「はい。ですが、今は呆けている場合ではありません。―――扇、ありますか?」


「え・・・ええ。あるわ、ここに」


「では、それで結界を張って身を守ってください。私は龍作様の援護に回りますので」


言うが早いか青風は黒い煙の中に飛び込んでいく。


それと同時に懐かしい声が響いてきた。


「―――大丈夫か?」


声の主は意地悪い笑みを薄く浮かべていた。


「龍作・・・」


「悪い、少し遅くなった」


「―――・・・遅いのよ、全く」


「悪い、悪い。だが、ついでにその周りの悪鬼達は任せる!!」


「なっ・・・!?ちょ・・・待ちなさいよ!!」


必死で呼び止めるものの、龍作の姿は既に見えなくなっていた。


「全くもう。助けに来たならちゃんと助けてから行きなさいよ!!」


舞姫は周りを囲む悪鬼達を睨みつけると不適に笑った。


「―――覚悟しなさい。一匹残らず退治してやるわ」





*  *  *





黒い煙が舞う中で、龍作と青風は互いに刀を構えて煙が収まるのを待っていた。


「くそっ・・・、やっぱり無理に結界を破るんじゃなかったか・・・っ!!」


龍作はチッと舌打ちした。


「今更言っても後の祭りって奴だ。それよりも前を見ろ!!前を!!」


青風の語調が変わったのを龍作は見逃さなかった。


「―――来たか」


瘴気の煙が収まってくると、目の前に姿を現したのは巨大な黒い塊だった。


「はんっ、まだ完全じゃないってか。―――久しぶりだな、大妖王」


『―――青風か。どうだ?その死せぬ身は』


青風はギリッと歯噛みした。






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