第二話 参

それからだ。

全てが狂い始めたのは。

始めは舞姫の母親だった。

突然、原因不明の病で倒れてもう一月も臥せっている。

その後優しかった父は政の事しか頭になく、皆に冷たく当たるようになってしまった。

舞姫は、もうこれ以上母に心配はかけたくないと言って貴族の姫らしい振る舞いをしようと頑張っている。

だが、それも今の舞姫には精神的にかなりの負担になっていることだろう。

そして、一月前自分達の関係も少し変わってしまった。

先に動いたのは舞姫だった。

今までは互いを呼び捨てで呼んでいたのだが、舞姫は初めて「龍作様」と呼んだ。

だから自分も舞姫を「舞」ではなく「姫」と呼ぶ。

自分はあくまで舞姫の話し相手として雇われている存在。

たとえ幼馴染だとしても、時には超えられない壁というものもある。

「・・・・・・舞姫、陰陽師を呼ぼうか?」

「・・・!?だ・・・駄目!!お願い、あまり事を大きくしたくはないの・・・っ!!」

龍作の衣にしがみつき、必死に懇願する。

舞姫のそんな姿はもう二度と見たくないと思った。

やはり、無理をしている。

「わかった・・・。陰陽師は呼ばない。ここの浄化は俺がやろう」

舞姫はハッと弾かれた様に顔を上げる。

「龍作・・・」



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