なんかおかしい。

違和感は数日前からあった。
最初の頃は若い女が寝ているというのに布団をひっぺ返すように起こされ、連行するかの如くご飯を食べに連れて行かれた。
なのに最近はどうだ。
襖越しに声を掛けられ、返事をしたら「待っています」と一言残して下がってしまう。

(疑いが晴れたから…?)

そんなことも思ったが、それならそれでなんかよそよそしい。
原田さんも永倉さんも避けられてるかのように出会わない。

(やっぱり、まだ疑われてるのかな…)

嫌な考えがぽつぽつと浮かんでくるのを頭を降って停止させる。
ひとまず身支度を整えて、そろりと襖から顔を出すと、ちょうど原田さんと永倉さんが通りかかった。

「お。名前も今から飯か?」

「あ、はい…」

「んじゃ、一緒に行くか?」

にこりと微笑む姿は以前と変わりない。
なのに、なんか居心地が悪いのは気のせいだろうか?

「そういや今日から平助も、」

「おいっ!!」

「…っと。悪ぃ悪ぃ」

2人してちらりとこちらに視線を送る。

「どうか、しましたか?」

にこり、と微笑む。
こんな時は聞こえてない振りをした方がいい。
たぶん、内部情報をできるだけ知らないほうがみんな優しくしてくれる。
込み上げてくる疎外感をそっと奥底にしまい込み、何事もないように素知らぬ顔をする。
また、何事もなかったように朝食に向かう。

「あ。名前も一緒じゃん!お前も倒れたって聞いたけど大丈夫か?」

ばたばたと足音が近づき、見知った顔が心配に歪む。

「ばっ…!平助ッ」

「あ、平助君おはよう。なんか久しぶりな気がするね」

永倉さんが何か言いたそうに声を出すけど、平助君に会うのが久しぶりで、嬉しくて思わずテンションがあがる。
すごく長い間平助君に会ってなかった気がする。
いつもと変わらない様子なのに、よくよく見ると頭に包帯を巻いていて痛々しい。
これも任務、ってやつなのかな?

「元気だった?」

「超元気に決まってんじゃん!今日からやっとみんなに合流していいって言われてさー」

平助君の元気な声が心地良い。
なんかずっとみんな私にはよそよそしかったから。

「は?」

「あ、れ…?」

2人で話していると、原田さんと永倉さんが顔を見合わせて不思議そうな顔をする。

「左之さんも新八っつぁんもどうしたんだよ?ちんたらしてっと置いてくぞ?」

「あ、あぁ…」

平助君が2人に声をかけると、私たちから少し離れて原田さんと永倉さんが続く。

(そうか。
今まで平助君がいなかったからこの2人もおかしかったのかな?)

そう考えると合点がいく。

(じゃあ、これからは前と変わらなく接してもらえる…?)

嬉しくなって自然と足取りが軽くなり、途端にお腹も減ってきて可笑しくなった。






「平助が引き金じゃなかったのか…?」

「でも何ともねぇみてぇだぞ」

2人がそんな会話をしていたなんて、私は気づくはずもなかった。




(やっぱり)(みんなが揃ってないと)(…でしょ?)


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