「左之さん、ちょっと」

「ん?」

胡座をかいて晩酌を始めている左之さんの腕をかき分けて、いつもの定位置へ。






ベストプレイス









きっかけは何だっただろうか。
いつの頃からか、こうすることが癖になってきた。

「何かあったか?」

ほのかに耳に当たる左之さんの声が心地良い。
お酒の所為で少し体温が上がっているのか、いつもより温かい。

「…うん、ちょっと落ち込んでる」

「…聞くか?」

左之さんの問いかけにふるふると頭を振る。
そうすると左之さんはそれ以上聞いてこない。
それがすごく有り難い。
落ち込みたいときはとことん落ち込みたい。
でも1人になりたくないときに左之さんの存在はすごく救いになる。
ごくり、とお酒を飲み下す音が聞こえた。

「慰めるか?」

落ち込むだけ落ち込んだら、タイミングを計ったように声をかけてくれる。

「……うん、ぎゅっとして?」

返事の代わりに左之さんの腕にぎゅっと力が入る。
こうしていつも左之さんは私を浮上させてくれる。




「左之さんが落ち込んだ時はしてあげるね?」

「期待しとくよ」

左之さんは私を抱えたままクツクツと笑う。

「あ、あとここは私専用だからね?」

「分かってるよ」

返事と同時にキスが降ってきた。


落ち込んでも浮上させてくれる人がいる。
場所がある。

だから。

私は安心して落ち込めるの。



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