「寒っむ…」

もぞもぞと布団の中から顔を出す。
あまりの寒さに掛け布団を羽織ったまま障子を開けると、一面の銀世界。
太陽が照り返し、きらきらと眩しい。

「雪だーーッ!!!」

久しぶりに積もった雪にテンションが上がり、布団もそのままに適当に着替えて外に駆け出した。





「……名前?」

聞き覚えのある声に振り向くと、左之さんが驚いたようななんとも言えない複雑な顔をして立っていた。

「あ、左之さん!見て見て、すごいでしょ?」

西本願寺のだだっ広い敷地を勝手に拝借し、朝から作った自信作。
ほぼ人間の大人サイズの雪だるま。

「お前…1人で作ったのか?」

「え?ううん。丸くしたのは1人だけど、乗せたのは通りすがりの新八さん」

誰も足を踏み入れていない雪原では面白いくらいに簡単に大きな雪玉になった。
が、2つ並べたところではたと気づいた。
女の細腕では乗せれそうもない。
とりあえず腕を回してみたが、ぐらぐらと揺れるだけでびくともしない。
小さく作り直そうかとも思ったが、荒らしまくった敷地では茶色い雪だるまになってしまう。
頭を抱えていると、こっそりと出かけようとしている新八さんを見つけ黙っているかわりに手伝ってもらった、というわけだ。

「自分より大っきい雪だるまなんて初めて作ったよ」

愛しの雪だるまちゃんの頭を撫でる。

「……名前」

不意に名前を呼ばれ、手を掴まれる。
私の両手は左之さんの両手にすっぽりと包み込まれ、じわじわと温もりを伝える。

「ったく、こんなになるまで夢中になってんじゃねぇよ」

そのまま左之さんの口元に近づけられ、はぁと温かい息を吹きかけられる。

「さっ、左之さん…っ、あの……」

突然のことに頭が真っ白になる。
心臓は早鐘を打ち、一気に顔に熱が籠もる。

「顔、赤ぇぞ?風邪ひいたんじゃねぇか?」

いやいやいや、陰ながらひっそりこっそり恋い焦がれていたあなたに手を握られているからです…なんて言えるわけもなく、ただなすがままに左之さんにおでこを触られる。
全身が心臓になってしまったかのようにばくばくと煩い。
触れられた部分から伝わってしまいそうで、余計に落ち着かない。

「とりあえずこれ着とけ」

ふわりと掛けられる羽織り。
左之さんの優しさと温もりと匂いでくらくらする。
ああ、もう本当に大好き!

…なんて言えるわけないから、握られた手から伝わればいいのに。



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