ほんのりと陽の当たる窓際でごろりと横になる。
木枯らしが寒い季節になったが、窓を閉め陽の当たる場所にいればそれなりに温かい。

「あ、新八さん」

片付けが済んだのか、名前も近くに腰を下ろす気配がして首だけで振り向く。

「せっかくだから、どうぞ?」

「お、悪ぃな」

にこりと微笑んで膝をぽんぽんと叩き、こちらへ来いと呼ばれる。
断る理由もないので、遠慮なく名前の膝に頭を置く。
決して肉付きが良いわけではないのに、なんとなく柔らかく心地良い。
女ってのは不思議な生き物だと思いつつ、その気持ち良さに目を閉じた。
ふわりと温度の低い名前の手が耳に触れ、くすぐったい。

「この間読んだ本がね、ミステリーなんだけど…」

機嫌が良いのか歌うように言葉を紡ぐ。
その間も耳を弄る手は止まらないので、気持ち良いようなくすぐったい感覚にぴくりと身をよじる。

「…耳かきをしながらね、そのままぐさっとやっちゃう話、で」

ぞくりと背中に嫌な汗が流れる。

「お、おい…」

「あ、動かないで」

本能的に危険を感じ、身体を動かそうとすると名前にきつい口調で叱られる。

「今の状況とすごい似てるなぁって」

くすくすと笑いながらも名前は手を休めないので、ますます恐怖心が煽られる。

「名前……?」

「………」

唯一の自由は言葉のみ。
しかし突然の沈黙にあえなく撃沈する。
どうしたものかと頭を悩ませていると、突然耳に息を吹きかけられぞくぞくと背中が粟立つ。

「はいッ、こっちは終わり!」

転げ落ちるように膝から頭をあげると満面の笑みの名前と目が合った。

「すっごい大物がいたよ!見る?」

「いえ、結構です…」

きらきらと目を輝かせる名前に、思わず敬語になった。







(…耳かきは自分ですっから)
(なんで?ごめんね、痛かった?)
(いや、、(精神的にえぐられた気が…))
(? 変な新八さん)



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