なると | ナノ
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彼は強かった。というか全く勝てる気がしなかった。
ああ、ほんとに頭がいい。
将来有望とはこの事ですね。

「あー、参りました」
「なかなかっすね」
「そう?見事にうちのめされたけど」
「少なくともアスマより強いっすよ」
「えー、あんまり嬉しくないよ、それ。はは」

アスマさん強くなかったし。

今はそこまでではないけれど、昔、私が人間付き合いが下手くそだと知っていたのか、もうこの世にいない彼は
そんなに強くないくせによく私と将棋をしてくれた。
そんな彼を私は慕っていたし、尊敬していた。
彼は、かっこいい大人だった。

「アスマと、」
「ん?」
「アスマと仲良かったんスね」
「仕事でよく一緒になって」
「そっすか…」
「寂しいよね、ほんと」

憧れだった。

異性としての感情ではなく人間として憧れ、ずっとそう思っていた。
しかし彼が死んだと聞いた時、私の感情は異性としてのものだったと気付いた。
それでも遅すぎた自覚はどこにも吐き出せなくて
大きなお腹を抱えて涙をながす紅さんを眺めることしか出来なかった。
私の中で彼は大きすぎる存在で、未だに胸を苦しくする。


「…、あー…久々に人と将棋したらお腹すいちゃったな」
「確かにいい時間ですね」
「…今更だけど、時間大丈夫だった?仕事、だったでしょ」
「いや、さっきので今日は上がりだったんで」
「そうなんだ。じゃあもうちょっと大丈夫?」
「大丈夫っすけど」
「よし、ご飯行こうご飯」
「はあ」

シカマルのやる気のない返事を聞き
知らないうちに暗くなっていた部屋の電気を付けてちょっと着替えてくると部屋を後にした。



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