なると | ナノ
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私が元住んでいたのは火の国の端にある小さな村で穏やかで実に平和なところだった。
両親は忍で、仕事の為に夫婦でこの村に移り住み小さな家を建てそして私が生まれた。

ある日、出張で数日家を開けていた父が帰って来て言った、「木ノ葉に戻ることになったよ」と。
両親からしたら、そこは戻る場所であるが私からしたら未知の場所だ。
祖父母はずっと木ノ葉隠れの里に住んでいたようだが
私が生まれた時には既に亡くなっていた為
私は5歳になるまで生まれ育った村を出たことが無く外の世界が怖くてたまらなかった。
そして、幼いながらに村でできた友人と離れるのが嫌で一晩中泣いて両親を困らせたが私の感情とは無関係に世界はまわる。
数週間後には、私たち家族は木ノ葉隠れの里に引っ越しをしていたのだ。

引っ越してからは、バタバタと仕事に家事に走り回る両親を横目に私は家の中で一人で遊んでいた。
新しい家の近所には同年代の子供も居たようだが、田舎育ちの私には馴染むことができなかった。
というよりは、ちょっとした両親に対しての抵抗だった。
近所の子供がせっかく声を掛けてくれても、私はわざとその誘いに乗らなかった。
こうやって家の中で一人で寂しくしていればきっといつかあの村に帰れるのではないかと、そう思っていたのだ。
しかし、私の小さな抵抗は両親に真っ直ぐには伝わらず
何故か友人を作るための環境に属させるという方向へ向かい
アカデミーへ入学することなった、これが私が6歳の時である。

しかし、私の人見知りは知らないうちに私の中で根を張ってしまったようで
集団生活に身をおいても一向に治る気配はなかった。
教室で一人で本を読んだり、外の鳥を眺めたりしたりして休み時間は過ごし
そのうち父が持っていた将棋の本を読み始め、脳内で詰将棋をしたりして暇を潰すような渋い子供に育つ。

そうすると自然と集団からは浮いてしまう。集団といわれるほとんどものは排他的なものだ。特に子供なんてものは、どストレートに、だ。
他と違うもの嫌う。一人でいることを怖がる。
故に友人と親交を深めるための休み時間に一人で目をつぶり、なにやらブツブツつぶやいている様な人間がいれば
彼らの瞳には随分と異常に写ることだろう。まぁ、異端として見られるのは仕方ない。
しかし、集団は異端をほっといてくれない。
何故ひとりなのかと問い詰め、別に一人で事足りるからと答えれば
思った通りの答えが返ってこなかった事に戸惑い、攻撃をはじめるのだ。
男子が「なにこいつ気持ち悪い!」といってからかう姿をみた女子の一部が
私をからかう男子の中に好きな子がいるのか「調子に乗らないでよね!」とつっかかってくる。
理不尽である。不条理である。

所謂いじめが始まり、実技授業で押されて転んだり
水をかけられ水浸しになったり子供らしい嫌がらせを毎日されるようになった。
生傷の耐えない私を見て教師や親が心配したが
どこか負けん気の強さがあった私はやられてばかりではなかった。
家に帰ったらお父さんに相手をしてもらい、いじめっ子撃退の訓練を積み
反撃をしてつかみ合いの喧嘩をしたりしていたら、そのうち腕っ節の強いクラスメイトを投げ飛ばすぐらいに強くなっていた。

時は経ち段々と私への嫌がらせは減り、陰口を叩かれる程度になった。
陰口ぐらいなんともなかった。元々ひとりでいるのに慣れてきていたし
ちょっと周りがうるさいぐらいで、私はまた、平和な休み時間を手に入れたのだ。
対いじめっ子の訓練が功をそうしたのか、数年後私はすんなりアカデミーを卒業し下忍となり
それからは人と交流することを覚え、現在はそれなりの人間関係を築いている。

そんな幼少時代を過ごし、なんとなくのろのろとした下忍時代からそこそこ働いた中忍時代を経て上忍になったばかりの頃に
木の葉崩しがあって九死に一生を得たり、最近では暁という物騒な連中が里をめちゃくちゃにしたり
何だかバタバタと忍世界に翻弄されながらもなんとかギリギリ生き残っている。
いや、実はペインに口寄せされたでかい犬みたいなのにバーンとされて
一回死んだけどペインのなんちゃらとかいう術か何かで生き返った。
(すげえ!強い人って!そして曖昧!)

忍って大変だな…なんでこんな職業選んでしまったんだろう。
両親が忍とはいえ、ほかの職種でもよかったのに。
アカデミーを卒業して他の仕事に就いてる人は結構いたのに私は流されるままに忍を続けている。
嫁にいく予定は全くないし、いつか任務中にぽっくり逝ってしまうのだろうか。

「儚い…儚いな…」

遅めの朝ごはんを食べながら遠くを見ながら呟くと、
お母さんが「何言ってるのアンタ。早く食べちゃってよ、片付かないんだから!」と急かしてくる。
たまの休みぐらいゆっくり寝かせておくれよ、ママン。

「アンタ、今日休みでしょ?」
「うん」
「婚活でもしてきなさいよ。今は里コンっていうのが流行ってるらしいわよ?」
「…は?なに藪から棒に…」
「何年か前に、ほら…タケシ君だっけ?あの子と別れてからずっと彼氏いないんじゃない?」
「なんで知ってるの?一体どこ情報なの、ソレ…っていうかそんなに慌てる年齢じゃないから、いいよ別に」
「そんなこと言ってると嫁ぎそびれるわよ!じゃなくても色気もそっけもないんだから」
「えー、めんどくさい」
「…俺はまだいいと思うぞ?ゆっくりでさ」
「だよね?お父さん!」
「お父さん!何言ってるの!?あなたハナコが嫁に行くのが嫌なだけでしょ!そろそろ子離れしなさい!」
「えー…だってぇ」
「大丈夫だよ、お父さん!私、嫁に行く気ないからさ!安心してよ。ずっとお父さんといるから!」
「ハナコ!」


そんな父と娘のやりとりを「はぁ」とわざとらしいため息で眺める母。

これが私の休日。
平和だ、忍一家なのに。
このままパラサイトして生きていこうとなんとなく決めた休日のAM10:00。







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