なると | ナノ
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「なんで、」
「…アンタはいつも…はぁ、シズネさんが探してます」
「え、あ…ですよねー」


そうだった、私は仕事中なのだ。なのに初めて自分で買った着物に浮き足立ってしまった。

「も、戻ります。佐々木くん、またね」
「はい、あ、これ、元々着てらっしゃった服です」
「ありがと」


って、私この格好で仕事に戻るのか…。
どんだけ浮かれポンチ野郎だと噂されるのが目に見えている。

どうしよう。

とりあえず、着替えたいなんて言い出せそうな雰囲気ではないので、佐々木くんから袋を受け取り
佐々木母に挨拶をして佐々木呉服店を後にした。


カラコロ、カラコロ


歩きづらい。


カラコロ、コロ


すごく歩きづらい、しかも慣れない下駄だから擦れちゃってすごく痛い。


カラ、


「…うち近いんで寄っていきますか」
「…えっ!」
「それ、痛いんじゃねぇんすか」
「う、うん」
「うちで着替えていけばいい」


エスパーシカマル。私がいる場所がなぜかわかるこの男。
私が思っていることもわかってるのか…

そもそも二人きりなんて耐えられそうもない。
きっとシカマルは私の気持ちに気がついてるだろうし、しかも多分うざがってる。
あの眉間の皺が物語っている。
今日も今日とて私のせいでパシリにされて、可哀想な奴だ。
私が悪いんだけどさ。


「ごめんね」


なんだかとっても心が沈んで、柄にもなく泣きそうになる。
これだから乙女ってのはめんどくさい。


「謝んなくていいっすよ」
「だって、怒ってるじゃん」
「怒ってねぇって、ほら」

そういって私に手を差し伸べるシカマル。
なにそれ、めんどくさい私に手を差し伸べるお前は聖人君子か何かですか。
足が痛いんだろ、ほら仕方がないから手を貸してやるよ、ホントは嫌だけど。ってところですか。
ありがたい話ですけど、それは恥ずかしいのでお断りしたい。
好きな人の手を素直に取れるほど、女子力高くねぇんだよ、バカ野郎。
じゃなくても、今私は浮かれポンチなファッションで忍だらけの道を歩いているわけで、コソコソと噂話されているのにも気が付いているわけで
調子に乗って化粧までしちゃうとは、これは本当に穴があったら入りたい。

私がモジモジとしているとシカマルはまた眉間に皺をよせて手を引っ込める。

「…嫌ならいいっすけど」
「ちがっ…うけど、何というか」

恥ずかしくて、と控えめに言うと、シカマルは前を向いてしまった。

ああ、素直になるとこうなるんだよ、知ってた知ってたよ。

もう帰ろうかな、今日は仕事できる気もしないし。


「何なんすか、一体」
「…へ?」

頭をわしゃわしゃとしてその場に座り込んでしまったシカマルに、驚いた私は慌てて駆け寄って肩に手をやると
その手をシカマルが掴んできた。

「え、」
「…さっきの嘘っすよ」
「…はい?」
「さっき、佐々木に言ったのはあんたを連れ出す為の嘘だって」
「なんで、」
「っ、」

いきなり立ち上がったシカマルに驚いて身体を引くと、掴まれていた手をギュッと引かれてもう片一方の手でシカマルの服を掴んだ。

「あ、ごめ」
「なんで、男の前で無防備に口開くんだよ」
「は?」
「なんで、あいつの前だとあんなに楽しそうに笑うんだよ」
「…シカマル?」




「俺、にしとけよ」



気がついたら目の前には上忍のベストが広がっていて、
あれ、なにこれ、私もしかしてシカマルに、


抱きしめられてんじゃなないの?

って、シカマル今なんて言った?

いや、あのって、おい!やばい!
やじうまがやばい!ヒューとか言ってんじゃねぇぞ!そこのおっさん!
土遁で生き埋めにするぞ!てめぇ!

人だかりと生暖かい視線に耐え切れず
慌てて、シカマルの胸をポンポンと叩く。



「え、ちょ、シカマル!」
「アンタ俺のこと好きなんじゃねぇのかよ」
「へ!?今!?今言うのそれ!」
「あんな顔されたら嫌でも気がつくっての」
「いや、シカマルさん?今じゃなくていいんじゃない?往来でする話じゃないよね?」
「なのになんだよ、なんで避けんだよ」
「いや、それは、あの、気持ち悪いかなぁって」
「好きな女が近付いてくんの気持ちわりぃとか思わねぇよ」
「え、」



「シカマル私のこと…好きなの?」



「おせぇっての」



体が少し離れて、シカマルを見上げると、真っ赤な顔してまた不器用に笑うから
何か、鼻の奥がつーんとしてきて

あ、


「泣くなよ」
「私、だって、っ、泣きたくねぇし、」


キーッスしろ!キーッスしろ!とはやし立てる野次馬に殺意を覚えながらも
止まらなくなってしまった涙をグズグズと手の甲で拭う。

あ、やべ、化粧してたの忘れてた。


「化粧、ひっ、してたの忘れてた、ぐず」
「ほら、こっち向けって」
「ぐちゃぐちゃだから、やです」
「いいから」


両手で顔を挟まれて無理矢理目を合わせられる。


「十分だろ」
「は、なに…っ〜!?」



目の前にシカマルの顔があって、唇に柔らかいものがくっついた時には
そのへんのガラス窓が全部割れちゃうんじゃないかと思うぐらい悲鳴のような歓声があがった。


「な、、ななにが、いったいわたしは…」
「ちっ、ほら、あー、ちょっと暴れんなよ」
「は、へ!?シカマル何を、てかキャラ崩壊してない!?」
「俺はアンタを攫いに来たんだっての」


誰このプレイボーイ…!




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シカマルのキャラが行方不明

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