なると | ナノ
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私の知らない黒い笑顔で笑う佐々木くんに驚きつつも後ろを振り返ると
これまた重い何かを背負って頬をピクピクしながら笑っているシカマルが居た。

なにそれこわい

思わず佐々木くんの後ろに隠れる。
なにあれ怖い。奈良シカマルに一体何があったというのだ。

そしてシカマルはずんずんと私と佐々木くんに近づき私の首根っこを掴みズルズルと引きずって出口へ向かう。
え、何も言わずに!?どういうこと?なんだこいつは!
ポッケから急いでハンカチを出してぐちゃぐちゃの顔を拭く。
そんな私を無視して更にずんずんと進むシカマル、そして絞まる私の首

「ぐえ、ちょ、シカマル!痛いってか苦しい!え、あの!佐々木くんまたね!お見舞い来るからね」

引きずられながらも佐々木くんに手を振ると、佐々木くんは苦笑いしながら手を振ってくれた。
…あ、佐々木君ってやっぱりかっこいいな!今まであんまり意識してこなかったけど顔がいい!さらに乙女系!(?)
きのこ系でもあるけどけど!ありゃモテるよ、なんの冗談か私が好きみたいな流れあったけど、この入院中に是非眼科もかかるべきだ。
今度お見舞いに来た時にでもおすすめしよう。

とりあえず、摩擦でお尻がやけどしそう。
相変わらず廊下をズルズルと引きずっていくシカマルはどうやらそのまま私の病室へ向かうつもりらしい。

「シカマル!歩く!自分で歩くから、っちょ、!いきなり離すなよ、もう…」

急に手を離されて後頭部を床に打ち付ける。
嘘だろ、今日退院するやつにこの仕打ち、ありえない。

こいつってこんなキャラだったかなと首を傾げながら服をパンパンをはらい、
シカマルをみると、何だかまだ怒っている様子。

気まずい。
なんだ、この重い空気は。
…ええ?めんどくさい。


「…シカマルくん、今日はあれかな?先輩である私を向かいに来てくれたのかな?ん?いやーいい後輩を持って私は幸せだよ、っははは、」

先ほど泣きすぎた後遺症で鼻声の私は、あまりに重い空気に冗談を言い、ちらりと横を歩くシカマルを見た。
すると、眉間に皺が深く刻まれていた。

さっきから一体どうしたの、あいきゅー200ってば


「シカマル、くーん?」
「…」


だんまりを決めるシカマルをみて思わずため息が出てしまう。
なんだってコイツはこんなに機嫌が悪いんだ。
退院が決まった私に、祝いの一言ぐらいあってもいいんじゃない?なに?機嫌悪いなら何故わざわざ来たんだよ。
なんで、こんな重い空気なわけ?
私が悪いの?え?私が悪いの?




「ねぇってば」
「…、」


はい、アウトー、そういって私は向かっていた方向とは真逆に走り出す。
それに気付いたシカマルはクエスチョンマークを頭の上に乗せ私を呼び止めていたけど、もう知らん!
そして、10mほど離れたところで、くるりとまた進行方向を変える。

「…ハナコ、さん?何を、」
「何があったか知らないけどね、何時までもウジウジウジウジウジウジしてんな!あほ!ばか!」
「…ひでぇ、なおい」

シカマルがいつもの癖で首の後ろを掻く仕草をしたのを合図に、クランチングスタートを切った私は全速力で今来た道を戻る。

そして、シカマル立っているの3mほど手前で踏み切り、両足を揃えて

「どーん!」
「え、ちょ、何してんす、ぐは!!」



必殺!飛び蹴り(そのまま)


よろめいたシカマルを見てにやりとして私は、忍らしくクルリと一回転して着地しようとした。
が、長い入院生活のつけか、思ったように体は動かなくて空中でバランスを崩す。


「あ」


あ、やばい。

これ、頭から着地の最悪なパターンじゃね?


「おいっ」


行き場を無くて宙に浮いた体が、何かに引き寄せられて、覚悟した衝撃は思ったよりも軽減された。


「あぶっねぇ…な。なにやってんすか、アンタ。病み上がりの癖に」


シカマルの上に落ちた、そう理解した時には彼の胸が目の前にあって、
今どういう事になっているかわかっているのに、この状況に頭がついていかない。


「…あ、ご、ごめん」
「ほら、怪我してないっすか、」


呆れたように言った彼は、私の肩を押して上半身を起こす。
私を上に乗せたたまま起き上がった為、私と彼の顔の距離はとても近い。


「…あ、」


私の下でシカマルの足が動いて、私を囲むように胡座をかいた。
シカマルは左腕を後ろにやって、身体を支えるようにして、私を見る。


「で、どうしたんす、か…」
「…っ」


目があった。

体中の血が顔に集まる感覚、なんだこれ


思わず俯いて、右手で口元を隠す私の顔を戸惑いながらシカマルは覗き込んだ。


あ、やばい、見るなって、


「ハナコさん、顔まっ」
「見るなあああああああああああああああああああ!」


向かっていた方向とは逆に全速力で走り出す。
私を呼ぶ声が後ろからするけど、振り向く事はできなかった。
だって、私の顔を見た彼の顔が、私の赤が伝染ったみたいにみるみるうちに飴玉みたいに赤くなっていったから。
頭のいい彼は絶対に気付いた。私が私自身の気持ちを今自覚したんだと。
しかも、それが、自分に向けられているのだと、絶対に気づいてる。



私、シカマルが好きみたいだ。




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ラストスパート

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