なると | ナノ
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食後、睡魔に負けそうになり、ポッケを探り、目がシャキッとなるあの辛い飴を探していると「これ、どうぞ」と目的のものが目の前に差し出された。
飴が乗っている手を辿っていくと、そこには佐々木くんがいた。

「…あ、ありがと」
「いえ、食後って眠いですよね」
「うん」
「僕もよく舐めるんですよ、この飴」
「効くよね、コレ」
「ええ、…以前、ハナコさんが食べてるの見て、僕も買ってみた口なんですけどね」
「あ、あー…はは、私この飴のCM出れそうだね」

少し気まずそうに伏し目がちに言う佐々木くんに、私もあの日の事を思い出し気まずくなる。お互い黙り込んでしまい、何とも言えない空気が漂ったが、それを破ったのも佐々木くんだった。

「…すいません。なんか気持ち悪いですね、僕」

そう傷つきながら笑う佐々木くんはやっぱり女子力が強くて
私よりもこの子が女の子に生まれてくるのが正解だったんじゃないのかと、本気で思ってしまった。

「気持ち悪くないよ!」
「そ、そう言っていただけると…」
「佐々木くんてさ、」
「はい」
「私より女子力高いよね?」
「…は?」
「いや、私より絶対男にモテるとおもう。君って結構綺麗だし、君のその言動に胸キュンするやつ沢山いるはずよ。実際今思わず胸キュンしたわ。男子的目線で」
「…あんまり嬉しくないですね」
「えー、勿体無い」


僕男ですし…そう複雑そうに呟いた姿は、とても可愛らしいものだったが
ソレを言うとまた落ち込みそうなので、心の中に留めておくことにした。




食後、またそれぞれの作業に戻った。
佐々木くんがくれた飴が効いて、目はシャキッと覚めた訳だけど
眠気の変わりに頭の中を埋めたのは、シカマルの事だった。

思春期特有の熱に浮かれたようなその感覚に思わず舌打ちする。

「どこぞの乙女か、私は」

一つ深く吐き出したため息は、口布を抜けて空に向かって消えた。


「ハナコさん!」
「ん、どうし、」

消える葉の間から見える空を見ていたら、
慌てた様子で私のことを呼ぶ加藤さんが横目に見えて
私から向かって右側を指さしていた。


「え、ちょ、佐々木くん!?」


加藤さんの指差す方向には、佐々木くんが倒れているのが見えて、その周りには黄色い靄がかかっていた。

「…何が?」
「わ、わかりません!ただなんか見たこともない草が急に花を咲かせて、」
「毒草か…わかった。取り敢えず、ガスマスク持ってるでしょ、それをつけて移動して、他の人にも念の為マスクをするように、他の班長にこの事を伝えて。風が強い、どこまでこのモヤが流れるかわからない。

「佐々木くんは…」
「私が救助する。班長だからね。ほら、早く!」
「は…はい!」


加藤さんの背中を見てから、佐々木くんの様子を見に向かう。
マスク越しにくぐもった声で佐々木くんに声をかけると小さく手が動いたのが見えた。

よかった、生きてる。

「ハナコ…さん、」
「話さないで、それ以上毒を吸うと危ない。佐々木くん、マスクは?」

佐々木くんが、力なく指差す方を見ると、半分溶けたマスクがそこにはあった。

「このマスクをして。」

私は、自分のマスクを取り佐々木くんに付けさせ、額にあったゴーグルをして口布の上からもう一枚布を巻いた。

明らかに、故意的に溶かされたソレを手に取る。
もうマスクとしての意味を成していない。
酸のようなもので音を立てて溶けていく。

そして、黄色いもやがかかるその一帯をみて、取り敢えず、これ、どうにかしなくてはと頭をかく。

「…かなりの力技だけど、ま、無いよりマシか…」


『土遁・土流壁の術』


ドドドと地鳴りと共にできた壁はその一帯を囲い、丸いドーム型になった。
久々にチャクラを使いすぎてだるくなった身体で佐々木くんを支えながら少し離れた場所へ行くと、他の班に報告に行った加藤さんが数人引き連れて戻ってきたのが見えた。

「加藤さん、報告ありがとう。じゃあ、このまま避難してください。」
「はい」
「すいません、この子をお願いします。かなり毒を吸ってしまったようなので」
「わかりました。タナカ上忍はどうされるのですか?」
「うーん、あれをそのままにはできませんからね、この場に残り対処法を考えます。里に報告お願いします。あと、こういうのに詳しい人に応援をお願いしたい。」
「了解しました。どうかお気をつけて。マスクなくて大丈夫ですか?」
「ああ、その子の分があの植物の酸で溶けてしまったので、応援の方に持たせていただけるとありがたい、です。とりあえず、この辺は隔離しましたから」



加藤さんたちを送り出し、さてどうするかと辺りを見渡す。
土流壁のおかげか黄色い靄はかなり薄くなっている。

あんな植物見たことがない。新種かな。

佐々木くんを運ぶ時、少量吸ってしまったのか、喉と肺が重痛くなるのを感じた。

これは、早いとこ解決して解毒しないと私もやばいかも知れない。
解毒剤は持ってはいるが、手持ちのものでは効きそうもない。


さて、どうしたものか


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