なると | ナノ
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「ハナコさん!」
「…佐々木くん?」
「今日は、宜しくお願いします」
「えーと、あ、任務?」
「はい、ご一緒させて頂きます」
「そうなんだ。ごめんね、まだちゃんと資料に目を通してなくて。宜しく」
「よろしくお願いします、あ、髪になんかついて、」
「え?」
「はい、取れました。葉っぱ、ですね」
「ああー、遅刻しそうで変なところ通ってきたからかな。ありがとう」


ちげぇ、偶然だ、偶然。
偶然、あの日から仲良くなった二人のそんな会話が聞こえて、偶然、距離が近くなった二人が目に入っただけだ。

わざと見てたわけじゃねぇよ。

そう彼女の髪に触れたあの男に言えたらどんなに楽か。
合ってしまった目を逸らしながらも、一語一句ふたりの会話を聞き取ってしまう耳が恨めしくて、なんとか誤魔化そうと小さく舌打ちをする。




「いいの、あれ」
「…いいも何も俺には関係ないっすよ」

俺の言葉にふーんと、どこかつまらなそうに本を読みながら相槌をうつ意地が悪い先輩に心の中で溜息をついた。



…クソッ、めんどくせーな



「…さってと、俺も行くかね。」
「あれ、カカシさん、今日任務だったんすか」
「急に入ったんだよね。”あいつら”と同じ任務」
「…へえ」

なに、気になる?やっぱり気になるんでしょ?と距離を詰めてきたカカシさんに背を向けて自分も任務に向かう。

…正直、薄々気づいている。自分の気持ちぐらい。
あの二人が仲良く話してるのが気に入らない自分に気がついちまってる。

うっすらと芽生え始めている気持ちに気づけないほど鈍感にはなれなかった。
が、その気持ちを認めてどうなる?
どうにもなんねぇじゃねぇか、もう死んじまった人を諦められない奴をどうすりゃいいんだよ。
しかもその相手を俺はよく知ってる、それに、越えられないこともよくわかってる。

ああ、まったく…始末に置けねえよな。

吐き出した白いため息が空へ消えていくのを見て
久々に雲になりてぇ、なんて思った。




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