なると | ナノ
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「あめぇな、しかし」

普段口にしない飴玉は思った以上に甘く、思わず眉間に皺がよる。
俺に背を向けて歩き出したハナコさんは潔いいというか、男らしささえ感じた。

最近将棋やら飯やら一緒にすることが増えた人だ。
上忍と中忍、お互い忙しいから時間があった時は予定がない限り一緒にいる気がする。
意識しないわけではないが、それを意識させない雰囲気があの人にはある。
イノやサクラとか知ってる女とはどこか違う。
空気みたいな、意識しなくてもそこにいるような存在。
男友達のような、自分にはいないが兄弟のようなそんなポジション。


”帰っていいよ。あとは自分でどうにかするから。”


―そう言われた時、みぞおちの辺りが重くなるのを感じた。
子供じみた独占欲か、それとも別の”何か”か。
その答えを出すにはまだ俺は餓鬼すぎるのかもしれない。

暫く二人が話しているのを見ていたが、ササキって奴と目が合いバツが悪くなり二人に背を向けた。
夕日が沈むのを見ながらゆっくり歩き出すと
後ろからかすかにハナコさんの声が聞こえた。

”もう叶わないんだけど、諦められなくてさ”


なんとなくだが聞きたくなかった。
言葉が頭の中でリフレインする。


ああ、めんどくせぇ

そう呟いて、小さくなった夕日と同じ色の飴玉を噛み砕いた。


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