なると | ナノ
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「あ、あの!」
「はい…?」
「僕、タナカ上忍の事が…!」
「え、」

若い中忍の男の子に告白されました、なう。
カカシさんに言われて、あくまで義理という形で割引の始まったチョコを勢いで購入してしてしまい
いつ渡そうか悩みながら歩いていた時だった、忍びらしくスっと私の前に現れたのは
前に長期任務で一緒になった中忍だった。

「以前任務をご一緒させて頂いた時から…」ともじもじとする男の子は私よりも女子力が強い気がする。
しかし、申し訳ないことに私は彼のことをあまり覚えていなかった。
何か話したような気もするし、話していないような気もする。とにかく私の記憶には仕事を一緒にした人という情報しかなかった。


ああ、どうしよう。こういうの慣れてないんだよね。告白とかカカシさんじゃあるまいし慣れる訳ない。


「あー…」
「あ、すいません!迷惑…ですよね」


チラチラとこちらを伺う乙女男子にどう言葉を返していいものか…。
うーん、困った。


「あ、いや、なんというか…」

えーと、と返事にならない返事を続けていると
相手の男の子も段々暗い雰囲気になってきてしまいとても気まずい空気になってきてしまった。
え、ちょっと、泣きそうじゃない?この子…え!


「えっと!あの、そ、その、うう嬉しいよ!」
「…え、じゃあ!」
「あ、いや、でも…なんていうか、ご期待に添えないというか…」
「そう、ですよね…」


私の言葉に一喜一憂する姿を見て、言葉がうまく出てこない。
やばい、人間関係をサボってきたツケがこんなところに…!
私が言葉を失い、自分の不甲斐なさに落ち込んでいると
中忍くんはこちらを真っ直ぐ見た。

「お付き合い、されてる方いるんですか」
「え…」
「それ…チョコですよね」


彼はスっと私の右手にある紙袋を指差す。

「あ、え、っと…」

何故こんなに追い詰められてるのか。
全てカカシさんのせいに違いない。

今私はここ数年で一番テンパっている。任務より難儀な状態だ。
ずっと「えーと、うーんと」というばかりで、これはいち大人として非常にやばいんではなかろうか。
これは、ただ義理チョコなんだけど、だけど一人にしかあげないし。
やっぱりこれは特別なのかも?いやでも、え、私にとってシカマルって特別なの?
え、特別って…いや、そんなまさか。私まだアスマさんの事好きなはずなのに。
あれ、よく考えるとそうでもない様な気がしてきた。え?え?


「…もし、それあげる人いないなら、思い出に僕にくれませんか」
「…はい?」
「それとも好きな人がいるんですか、やっぱり」

うわあ…めんどくさい。めんどくさいよ、この子。
ものすごくイジイジしてるし、きのこ生えそうじゃん。

こんなドンピシャで敢えてこの日に可愛らしくラッピングされたチョコなんて目的もなく購入しないでしょ。
それにもし私に好きな人がいないとして、このチョコの行き場がないとしてもお前にはやらん!自分で食うわ!
いつもやっすいチョコ食ってるんだからたまにはそこそこ高いチョコ食べたいよ!私だって!
…まぁ、偶然にも今回は自分の為に買ったわけじゃないけど。

と言ってしまえばいいんだけど…しかし私には言えない。そんなキャラじゃないし。
もはや風が吹いたら胞子飛ばしそうなキノコ系男子をこれ以上追い詰めないようなオブラートに包んだ言葉思いつかない。
言っていいならもうズバンと言ってもいいけど、後腐れありそうな予感しかしない。
幼少時代に学んだのだ。この手の人間(キノコ系)は用心して対処しなくてはいけない事を。


「えーっと、」

はあ。もうあげちゃおうかな。
元々カカシさんの提案で勢いで買っちゃっただけだし
別にいいかもシカマルにあげなくても。
めんどくさいし。


「えーと、名前は」
「…佐々木です」
「ああ、佐々木くん」
「よかったらこれ、」

あげるよ、そう続くはずだった言葉は遮られた。


「これ俺に、じゃないんすか?」
「「え」」


私の言葉とチョコレートを華麗に奪っていったのは奈良シカマルだった。


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