なると | ナノ
[ 9/26 ]

「先輩、そんな前のめりに虫歯になろうとしなくても…」
「いや、オマエの目にはそう映るの?この状況が?」


久々に見たはたけカカシはチョコレートの箱に埋もれていた。



「…ああ、そういえば今日はバレンタインデーでしたね」
「オマエ、今、里が大変な状況とは言え女子にあるまじき台詞じゃない?それ」
「里がこんな時に、チョコに埋もれてる男にだけは言われたくないっす」
「…」


どうやら世界がどんだけ大変な状況であっても女子力というものは衰えることをしらないらしい。
むしろ、いつ死ぬかわからない状況が手伝ってか最後ぐらい好きな人に想いを告げたいと
躍起になってるのかもしれない。

無茶苦茶になった里の復旧作業に今日も駆り出されてボロボロになった身体に
一息入れようと休憩所に来てみたら可愛らしい箱に埋もれた彼がいた。
そこで今日がバレンタインデーだと気付いた訳だけど
里は結構復旧してきたといえ、こんなときでもチョコレート売ってるんだ。
商魂凄まじいな。


「これ、食べる?」
「うっわ、先輩サイテー、オトメゴコロをなんだと思ってんすかー、ひどーい」
「…」
「まぁ、里の誉が虫歯になったら困るので、市販のものならもらってあげます」
「一々刺があるね、ハナコは」
「愛情です、愛情」


素直じゃないなー、とカカシさんが溜息をつくのを横目に可愛らしいラッピングを開けていく。
ごめんなさい、乙女たち。


「そういえば誰かにあげたの、ハナコ」
「え?チョコですか?」
「まぁ、義理あげるタイプでもなさそうだけど」
「義理も何も、誰にあげろって言うんですか」
「んー…シカマルとか?」
「…は?」
「は?ってオマエ…」
「シカマル?なんで?」
「いや、最近仲いいじゃない。」
「いやいやいや、一緒に将棋するぐらいですよ」
「前焼肉屋居たじゃない」
「あれは、ちょっとしたお礼におごっただけで」
「ちゃっかりおぶられて帰ってるしネ」
「それは…」
「なかなかナイスカップルだと思うけど」
「…ナイスカップルって…おっさんくさ」
「えーえー、おっさんですから」
「はぁ…何ですか、カカシさん。いつもはこんなこと突っ込んでこないのに」

少しめんどくさくなって、もらったチョコレートを口に含み
カカシさんを睨むと苦笑いをして湯呑を傾けた。


「いつまでも不毛な想い抱えてるよりいいんじゃない?」
「不毛って…」
「まぁ不毛は言いすぎたとしても、アイツはもういないし、居たとしてもオマエ奪えなかっただろ?」
「…」
「心配してたんだよ、アスマ。まぁ…お前の気持ちには気付けず逝っちゃったけど」
「ああ、」


自分の気持ちに気付かなかった私が言えた義理じゃない。
それに私の気持ちが尊敬から恋慕に変わっていたのに気づいていたのはきっと、目の前の男だけだ。
それもそれで癪だけど。


「あいつも言うだろうけど、結構お似合いだと思うよ。お前たち」
「お似合いって、お互いにそんな意識したことないですけど」
「わからないだろ、そんなの」
「…だとしても、大きなお世話ですよ、先輩」

口の中にむりやり詰め込みすぎてジャリジャリとしてきたチョコレートをお茶で流し込むと
頭の中でアスマさんが「相変わらずだな」とタバコをふかしながら笑った。




[*prev] [next#]

top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -