なると | ナノ
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「こーんにちは」
「…あ、ハナコさんか。ちっす」
「探したよ、まさかこんなところにいるとは」
「はは、見つかっちゃいましたね」


シカマルは彼女たちが言うように屋上で空を眺めていた。
なんとなく青春をしている彼の時間を邪魔するのは悪いなと思いながら控えめに話しかけると
少し意外そうな顔をして挨拶をする彼が立ち上がろうとしたので「そのままでいいよ」と
慌ててシカマルの横に座る。



「昨日は大変申し訳ございませんでした」
「いいっすよ。しっかりおごってもらいましたし」
「あの、」
「なんすか」
「書類…」
「ああ、提出してもらわないと俺も大目玉喰らいますんで」
「…いや、あの、ほんとすいません」

まじで申し訳ない。


「なんで謝るんすか」
「あ、えっと、ありがとう」
「いーえ、どういたしまして」
「うん。…そうだ、これお母さんから」
「俺に?」
「うん、色々迷惑かけたからって。美味しいよ、この豆大福」
「なんか、もらってばっかっすね、俺」
「いや、こちらこそご迷惑かけっぱなしで。あ、あとこれ、お茶買ってきたからどうぞ」
「ははは、準備万端じゃないっすか。じゃあ、これでチャラって事で、一緒にどうっすか?」
「…私も食べるつもりだったのバレた?」
「バレバレっすね」
「いやー、朝ごはん食べてなくてね」
「あんだけ飲めばそりゃそうだ」


そういって悪そうに笑ったシカマルはまた空を見たのにつられて私も空を見る。
お茶を飲みながら豆大福を口に含むとさっきの噂話を思い出した。



「―ああ、そういえばさ」
「はい」
「シカマルってモテるんだね」
「…は?」
「いやさっきね、噂で聞いたの」
「へぇ、そりゃ初耳だ」
「アンニュイでかっこいいって」
「…なに、ニヤけてんすか」
「ぶはっ、いや、なんとなく?ぶくくく」
「あー、綱手様に言っちまおうかな」
「ちょ、シカマルも共犯じゃん!」
「いや、俺は脅されて書いたって言えば…」
「…くそう!なんてひどい後輩だ、おごったのに、おごったのに…」


私がそう言えばシカマルは「はいはい」と笑ってまた空を見る。
横顔が何だか大人びていて、年下の癖に随分老けた奴だなと小さく笑う。
そんな私に気付いたシカマルが「なんすか」と不機嫌そうに言うから
それはまた可愛らしい反応だと声を出して笑った。
よくわからないという顔をしたシカマルに説明したらどんな反応をするのか、
興味がわいた。

「シカマルって、」
「?」


「あ!ハナコさんそんなところにいたんですか!?」


突然したの方から私を呼ぶ声がした。
声を聞いた時点でピンクの髪の毛が頭に浮かび、確認の為に下を覗き込むと
そこには期待通りのピンクが揺れていた。


「…げ、サクラちゃん…」
「げ、じゃないですよ!綱手様がお呼びです!もう!探したんですからね!?」
「ごめんって、そんなに怒らないでよ。可愛い顔が台無しだよ?」
「…何言って、あ!シカマルもサボってるの!?」
「サボってねーって。俺は休憩だぜ?」
「いいから!二人共早く降りてきなさい!」

「「…はいはい」」


お怒りの彼女に何を言っても無駄だと判断した私たちは
ちょっとした抵抗でゆっくりと階段を降りることにした。


「なんか、ごめん。また 巻き込んじゃったかも」
「あー、いいっすよ。どうせ休憩も終わりでしたから」
「そう?」
「そうっすよ」



階段を降り終えると、外でサクラちゃんが私たちを急かす声が聞こえる。
そんな世話焼きな彼女に苦笑いをしながら
私より少しだけ背が高いシカマルの横顔をみれば
シカマルも「めんどくせぇ」と一つに結ばれた髪の毛をガシガシと掻いた。

そういえば、彼らは同級生だった気がする。
あんまり覚えてないけど。


「あ、そうだ」
「ん?」
「今日夜ひま?」
「…あー、まぁ暇っちゃ暇っすかね」
「じゃあ将棋、」
「いいっすよ」
「…ちょっと、笑わないでよ」
「いや、あんまり嬉しそうにすっから」
「…だって、ずっと一人でしてきたから、相手がいるのはやっぱ楽しいじゃん」
「まぁ、そりゃ」
「でしょ?…まぁとりあえず働きますか」
「そうっすね」


「「じゃあ、また」」


取り敢えず、ピンクのあの子のご機嫌鳥にでもなりましょうか。





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