ハンター | ナノ
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私が何をしたというんだろう。
普通に生活していただけなのに、私は巻き込まれただけなのに。


そんな考えで頭がいっぱいになる。
ずっと歩き続けてたせいか、足が痛いしイルミに何かされたのか、首が痛い。
泣きすぎて目が痛いし、お腹すいたし、喉が痛いし、もう最悪だ。神様は味方ではなかったのだな、
そう諦めるしか私には道が残されていないようだ。



あの後、クロロさんは席を外した。


…誰かに連絡するのかな。


以前の私であれば、やった!旅団!旅団!と小躍りしていたところだが
泣きすぎて働かない頭ではまともに考えられず、机をぼーっと眺めて視点をぼやかすことに専念する。
今は何も考えたくないし、そんな余裕もない。


コトッ…


「……!?」


ぼやけた視界に急にカップが出てきて、体がビクリとはぜた。


「大丈夫よ、安心して毒は入ってないわ」


斜め後ろから低めの優しい声がしてゆっくり振り返ると、
背が高くて綺麗な女性がたっていた。
「沢山泣いて疲れたでしょう?」
そういって彼女はハンカチとクッキーが入った小さなお皿をカップの横に置く。
スーツがよく似合う彼女を私は知っていた。勿論一方的に。


クロロさんは私が話さないと踏んだのか。

だから彼女を…?


「…ありがとうございます。…あの、私が知っている事をお話します。…クロロさんはどこに?」


彼女…パクノダは驚いた様に目を大きく開けて、
そしてすぐにニコリと綺麗に笑った見せた。


「すぐ戻るわ。少し待ってね」
「あの…ッ、話すとき貴女もここに?」


立ち上がろうとした彼女は私の呼びかけにパクノダは少し考えて
「何か問題が?」と逆に聞き返してきた。


「…いえ、ありません。逆に聞いていただきたくて」


それと、私の心の準備を。



***


もうどうにもならないなら
どうにかなってしまえばいい。



「さぁ、どうぞ見ちゃってください!」
「「は?」」


やめてーーーーーそういう冷めた目で見るのは!

もう色々諦めた私はパクノダさんに読んでもらって楽をしようとするダメ人間です。
でもパクノダさんが来たということは、そういう事で。
私が話すよりも確実に的確に私の記憶を伝えることができるはずだ。
ならば私がわざわざ話すこともないでしょう?
泣くだけ泣いてもう疲れてしまったし、もう好きにしてください。


私が笑顔で肩を差し出すと、二人はまさに”ポカン”という顔をした。


え…なにその反応気まずい…


「いや…あの、ですから」
「驚いたな…それぞれの念能力も知っているのか」
「あ、はい…スイマセン…。あ!でも、でもですね!正直そこまで細かく覚えてません!お恥ずかしいお話ですが、私そこまで記憶力良くないので一度読んだ事は割と大雑把にしか覚えてません」


これは大事だよね!この世界の過去だか未来だかわからんけど
色々知ってるって事になって説明しろって言われても
なかなかなかなかそんな都合よく思い出せない。
しかも結構なスローペース(マイペース)な原作者な訳だし。
無理無理。正直蜘蛛団員の名前も怪しいぐらいだ。

…まぁ、でも正直パクノダさんが死んでしまうっていうのを知っているから
本人に見せるってどんだけ私極悪人なの状態だけどでも、
最悪で申し訳ないけど口に出して話す勇気は絞り出すことができなかった。
「貴女、復讐してくる人に殺されるんです。」
なんてどうやって話せと…無理だわ。
弱虫でごめんなさい。でも平和な世界で暮らしてきた私にはそんな宣告できないです。


どうにもならない雰囲気にちらりとクロロさんを見ると目が合って
咄嗟に目をそらしてしまうという更に気まずくなるという負の連鎖になってしまった。どうしよう…うう


「…パク、見てみろ」
「ええ、それはいいけど…」
「あ、なんか申し訳ないです。ほんと」


こんな微妙な雰囲気にしてしまって…


「本人が見て欲しいと言ってるんだ、利害が一致している。
なにより元よりそのつもりだった訳だから断る理由もないだろう」
「…そうね」


渋々という感じでパクノダさんは私の方へゆっくりと歩いてくる。
渋々にというのはわからないな。
まぁ結果嫌なものを見せちゃうことにはなるんだろうけど…。
あれかな、なんか私から嫌なオーラでも出てるのかな



「教えて頂戴。貴女は何を知っているの?」
「…っ」


ふわり、と肩に置かれた細い綺麗な手を横目に私は大きく深呼吸をして、
クロロ=ルシルフルの黒い瞳を見ることに集中した。


これが最後の深呼吸にならないように願いながら。




――――

始まる

前サイトより転記(3/22)

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