ハンター | ナノ
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「喉が渇いたな」と団長様がおっしゃいましたので場所を変えることとなり
なんにもない雑居ビル(窓とかバリバリに割れてるのにベッドだけあった)から
なんか高そうなホテルの一室にやってまいりました。
(あの吹きさらしの中で寝てられる私って一体…)
ってか、団長の足が速くて普通に走ったんだけど私!爽やかタイプじゃない時の団長ってなんて鬼畜!




「―では、失礼いたします」


ベルボーイが恭しくお辞儀をして部屋を出て行ったのを横目に、私は部屋の入り口で空いた口がふさがらなかった。

従兄弟のみやこ姉ちゃんの玉の輿結婚式以来だわ…こんなホテル。茶をしばくのにこの場所を選択するとかどんだけセレブなの、クロロ=ルシルフル。


「いつまで入口に立っているつもりだ。早く入れ」
「――あ…はーい。お邪魔します」


部屋に入り座るように促された私は、クロロさんが座っている前にある小さなスツールを選んだ。

今から私の命をかけた面接が行われるわけです。
クロロを「さん」付けしてるのは、目の前にいて怖いからです、それがたとえ心の中だとしても見透かされる気がするほど怖いっす。


「とって食ったりするわけじゃない。そんなに怯えるな」
「お、怯えてませんよ?」


あ、声が裏返った…


「ほう」
私の隠しきれない動揺に、クロロさんは喉でクツクツと笑いこちらを見直した。


「名前を聞いてなかったな。」
「ああ…すいません、ハナコです」
「――ハナコ、俺の名は知っているのか?」
「…」


急に確信に迫ってきたよ!
そうだよね…私イルミの名前呼んじゃったし、更に異世界から来てるとかいちゃったし…ごまかすのとか苦手なんだよね、私。
息をするように嘘を付く母の血を引き継いでるはずなのに…!


「えーっと…」


まだ死にたくないなぁ...はぁ、もう仕方ないかぁ。運良く生き残れたら母さんの様に嘘を嘘と思わせない様に生きたいです。


「クロロ…さんですか」
「――やはり、知っているのか。ハナコ、お前はイルミの名前も知っていたそうだな。
俺にしてもイルミにしても裏の人間だ。この世界の人間であってもお前のような普通の人間が知っているとは思えない」


私が普通の人間ってわかってもらえて本当に光栄です、団長さまさま。


「他には…?」
「え…?」
「他にも何か知っているんだろ?」
「しっ…」


知らないです。そう答えようとしたが、ここで嘘をついても私に本当のことを話させるなんてこの人たちにとっては朝飯前なのだ。


さて、どうしたものか。
正直に答えても、答えなくてもそこには地獄しかない気がする…


ゴクリ…ッ…


自分の喉が鳴ったのを聞いたのは、友人と山登りをした際に飲んだ生水をたんまり飲んだとき以来だわ。といっても、今回は生唾を飲むっていう全然爽やかな感じではないんだけど。


喉が動いたその感覚に不快感が残り思わず眉間にしわが寄る。
何か話さなくてはという焦りからクロロ=ルシルフルを直視できなくなり視線を落とした。

すると、部屋の空気が水分を含んだようにずん、と重くなった。

背筋がゾワっとした。息がしづらい。悲しくもないのに涙が出る。耳がキーンとする。


なんだろう、これ。

…ああ、殺気ってやつかな?
生まれてこの方殺気を浴びるような生き方はしていないつもりなのでこれは初体験です。


「…はな、話すんで…ッ…”ソレ”止めてくれませんか…?」


私の顎を伝って落ちた体液は、高級そうな絨毯にシミを作った。


尋問


―――――

このホテルのプリンはすごく美味しいといういらない裏設定。


前サイトより転記(3/22)

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