ハンター | ナノ
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変な女だった。


別に隠(イン)をしていたわけではないから、話しかけられること自体は不思議ではない。でも俺に話しかけてくるヤツなんて、同業者か俺を殺りにくる奴ぐらいだし。

最初は無視をしたがでもあまりにもひつこいから返事をすると、そいつは逃げていった。


なんなの、一体


別にほっといても良かったんだけど、職業柄逃げられると追ってしまう。
…あと、何か普通のヤツとは違う気がしたから...。というか暇だったからなんだけど。
そいつは足が異様に早かった。どこにそんな脚力を隠し持ってるのかは知らないけど、とにかく早かった。


まさか一般人相手にこんなに本気で走ることになるなんて…一般人、じゃないのか
オレも少し鈍ったかな?まあ、最終的には余裕で追いついたけど。




「あ、の。私は日本って島国から来たんですけど...えっとジャパンとかジャポン、とかあとは...えっとリーベン?だっけかな...よ、よくわからないですけど、どうしてここにいるのか私にはわかりません」
「...ジャポン」


―ジャポンって、あれか。爺ちゃんの好きな国か。


俺の零した言葉に一瞬嬉しそうにした女は、急に挙動不審になり
キョロキョロと何かを確認し始めた。


そして



「イルミ=ゾルディック」

と、そう俺の目を見て言った。確信をもって。


反射的に体が動いた。首を切り落としてしまう程の手刀を入れそうになったが加減して気絶させる。


こいつは、何かを知っている。


俺を見て俺の名を読んだ時のこいつの目は、確信を持っていた。それ以上に何かを知っているそんな気がした。別に何を知っていても構わない。弱そうだし。
ただ、なんとなく…好奇心ってやつかもしれない。


「で、何故俺なんだ」
「本好きでしょ、だから色々知ってそうだなって思ってさ」
「…それは、お前を手助けする理由にはならないだろう。」
「まぁいいじゃない。次の仕事半額で請け負うよ」
「…」
「俺、このあと仕事なんだよね。家に連れて行ったら母さんが煩そうだし」
「命の保証はしないぞ」
「別にいいよ。死んだら死んだで構わない。仕事の件はちゃんと約束守るから安心して」
「ああ」
「じゃ、頼んだよ」



―――――




う…ーん。なんか、頭痛い…あれ、いつ寝たんだっけかな……あれ、さっきまでなんかH×Hのイルミと話してた気が……ああ、そうか。やっぱり…


「…夢だったんだな」


目を開けずまどろみの中でそう確信した私は寝返りをうち二度寝をすることに決めた。

もう、いいんだ。今の仕事はストレスフルだったし、あんな夢を見たのはきっとストレスのせいだ。
だから起きたら辞めるって電話して、ちょっとだけある貯金で暮らしながら次の仕事を探そう、そうしよう。


「とりあえず、寝「残念だが、夢ではない」…」


私の決心(希望)は一瞬にして砕け散ったのだった。




「―で、お前はどこから来た」
「に、日本です…」


おぅ…イルミさん…貴方は夢でなかった上に、こんな凶悪な人のところに私を捨てていくなんて…


さすがです…イルミさん…



私の確信(希望)を打ち砕いたのは、A級賞金首の長でした。
ああ、なんてこと…


寝ぼけていたらどこからか声がして、咄嗟に声がした方を確認すると
そこにはおでこに逆十字があってふわふわの白いファーのついた黒いコートを素肌に着ちゃう様な痛い中二な人がいて
そんな…馬鹿な…ッとかつぶやいてしまった私もそこそこの中二ですねってうるさい。
ああ…夢じゃなかったなんてもう、どうすればいいの。
漫画や妄想や書物の中の話じゃなくて、現実にこんな凶悪な人を目の前にして私はどうすればいいのよ。
RPGで逃げるを選択しても失敗しまくるぐらい詰んでる。というか選択肢さえない感じです。


「ニッポン…?聞いたことないな」
「はぁ…。ご存知では無いでしょうね」


そりゃ、そうでしょうよ。ああ、またもや命の危機ですか痛いのはやだなー、いやホントに。


「…何故そう言い切れる?」
「えっとですね…それはこの世界には存在していないのではないかな、と。
似た場所は存在するかもしれませんがそれはやはり私の知る”日本”ではないと思います…」
「”この世界”?」
「…そうです…私は違う世界から来たんです!多分」


どどーん!どうだ!まいったか!



「………病院は紹介できないぞ」
「変な人を見る目はやめてくださいい…頭はいたって正常です。多分」
「冗談だ」
「うう、よかったです」
「で?お前はどの世界から来たんだ」
「…恐らく、多分ですけど......平行世界です。並行している世界から来ました。」
「...ほう、パラレルワールド、というやつか」
「―っ...」



うおおおおおおおおおお
恥ずかしいこれはなんだか恥ずかしいぞ!
こんな恥ずかしい語句並べて話してるのに笑えない辛さといったらもう…!
そして、なんかすごく平然と聴いてるけどこの人ちゃんと理解してるの?
え、もしかしてこの世界だとそう不思議なことじゃないの?
念能力あるし?まじで?おいおいおいますます大変なとこに来ちゃったよ。


「し、信じるんですか?」


というか、私がここがH×Hの世界だと信じてるという事の方が驚きですよね、ホント。


「…嘘なのか?」
「そんな馬鹿な!本当ですけども!凄まないでくださいよ!怖いから!」
「なるほど、面白い」
「私は頭が痛いです…」


どうせなら、最初は常識ある人に出会いたかったです。


―――――

確信

前サイトより転記(3/22)

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