ハンター | ナノ
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『仕事を頼みたいのですが』




そんな電話がきたのはゾルディックへ来てそろそろ1年と数ヶ月経つ頃だった。


『お久しぶりですね、ハナコさん』
「え…っと、はい、お久しぶりです、サトツさん」


電話の主は以前私がハンター協会に派遣された先の上司のサトツさんだった。
このサトツさんは…まぁ”あのサトツさん”である。
(…なんか私聞いたことあるハンターによく会うな)
戦うのが苦手だった私は遺跡の発掘、保護の仕事をもらえるようお願いしていた。
特に遺跡に興味があったわけではないが、一度でいいから仕事で世界中を旅したいなんて思っていた私からしたらなんとも魅力的なものだったから、話をもらった時は即了承した。
その派遣先でお世話になったのがサトツさんで色々良くしていただいたが、
特にプライベートで親交があったわけではない。
貯金がある程度たまった私は直ぐに仕事をやめてしまったし、私が彼に連絡先を教えたかどうかも覚えていない。
そんな人が急に「私の仕事を手伝って頂けませんか?」と連絡してきたら驚くのも仕方がないと思う。


「随分、急なお話ですね?なんでまた私に?」
『アナタの足が早かったことを思い出しまして』
「早いって言ってもそこまででは…」


足の速さが必要な仕事って何?発掘に必要あるとは思えない。
何か動物を追いかけるとか?そんなに早くないよ私。チーターとかだったら無理じゃない?


『謙遜されなくてもいいんですよ。アナタはハンターとして十分に実力がある』
「あ、はぁ…ありがとうございます。」
『いかがでしょうか?詳しいお話は一度お会いしてお話しさせて頂きたいのですが』
「あー、…ちょっと検討してもいいでしょうか?実は…」


とりあえず現在住み込みで仕事をしている旨を説明し、返事は折り返しということで一旦保留にしてもらった。


実はゾルディック家との契約期間はもう切れている。
耐性はそれぞれ出来たみたいだし、薬っぽいもの(漢方に近い)も出来た。
お気に入りのサプリも大量にストックしてあるし、もし無くなったら届けに来ればいい。
(そもそも住み込みで働く必要ってあったのかな…)
とにかく当初の契約からすると私がここにいる義務はない。


さて、どうしようか。
たまに家に帰って手入れしていたから、これをきっかけにスープ屋を再開してもいい。
電脳ネット通販で売るってもいいかもしれない。
でもそれなら正直どこでも出来てしまう。



「…んー。」


受けてみようかな、仕事。少し、淋しい気もするけど。

契約期間が終わってもここにいてしまったのは、なんだか居心地が良かったから。
まさか伝説の暗殺一家がこんなに居心地がいいなんて思わなかったからついつい長居してしまった。


「会えなくなる訳じゃない、か」


その言葉を口にするには私と彼らの仕事は危険と隣り合わせすぎるけど。



―――――

そういえばサトツさんに萌えていた時期があったな。
スーツとかに弱いという典型的すぎる人間なんです。
2次元のスーツが好きです。


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