ハンター | ナノ
22.5 [ 25/60 ]

廊下をほぼダッシュで駆け抜け私の部屋までイルミさんの背中を押してきた。
元々精神的にボロボロだったのに更に体がボロボロになった。
なんで休みの日にこんなに疲れなきゃいけないのか、
元はといえば私がミルキくんのお願いを断っておけばよかったんだが
それはそれで後々地味な嫌がらせに発展しそうで嫌だった。

息も絶え絶えに、額の汗をぬぐい自分の部屋にある簡易キッチンへ向かう。
ストックしてある調味料の瓶の中から適当に選び
作り置きしてあったスープを冷蔵庫から出しその中に少量入れて味を整える。
とても冷静にやっている風だがゾルディック家の廊下を猛ダッシュしたせいで呼吸が乱れてまるで変態が何かよからぬものを興奮しながら作っている図にも見えなくはない。
スープに火が入ったので急いでカップに移し、イルミさんのところへむかう。

「…どうぞ!」
「ん」
「…ふぅふぅ、あの、早かった、ですね。」
「うん。思ったより雑魚だったから」
「そうなんですね。ご無事でなりよりです」
「呼吸荒くて気持ち悪いから取り敢えず落ち着いてくれない?」
「…もうだいぶ落ち着きました。すいません醜くて」
「その服」
「…え?あ、あの似合わないですかね?アハハ」


わかっている余りにも無理があったことなんて。
でも、あの空気は怖すぎた。嘘でもなんでもあそこから逃げ出したかった。



あれを人は針のむしろと言うんじゃないでしょうか。
あんな空間にあと1分でもいたら精神崩壊しちゃいそうだったし
なによりミルキくんが不憫で不憫で…
確かに原因はミルキくんだけど、あの尋常じゃない怯え方普段どんな怒られ方してんの!?
とりあえず言ってしまった嘘を頑張って守ろうと思うけど
多分バレてるから、色々諦めてくれミルキくん。あと覚悟もしといてね。


「着替えないの?」
「あ、やっぱり着替えたほうがいいですよね?似合わないし」
「別にいいけど、俺仕事終わったばっかで興奮気味なんだよね」
「は、はあ。え…私を殺したいとか思っちゃうってことですか?」
「違うよ。はぁ…やっぱりハナコってバカだよね」
「今日なんか多いですね、それ」
「襲ってもいいって取るけど。」
「…は!?」


アドレナリン恐ろしい!興奮ってそっちにも働くのか!
変態じゃないか!変態ばっかだな!この家!
シルバさんキキョウさん、アナタ達のご子息は変態ばかりですよ…
それでもなんか喜びそうでほんとに嫌になるわ。


「はぁ…」


今日一日の疲れがどっと出てきたので
無言でクローゼットへ向かい服を適当に選びバスルームへ向かう。


「あ」

バスルームのドアノブを握って、ふと思いだしイルミさんを見る。

「なに」
「私が着替えるまで、絶対に入ってこないでくださいね。倒れたりしませんから!死んだりしませんから!」
「…俺、女心ってよく分からないんだけど、それって入ってこいってこと?」
「…は?」
「それならめんどくさいから一緒に入っちゃうけど?」
「ちっげーーーよ!!馬鹿!!ああああもう!」


バン!とバスルームの扉を乱暴に閉める。

思わず暴言を吐いてしまったけど、これは仕方ないと思う。

「っ…なんて日だ…。」

何処か知らないところへ行きたい、そんなことを遠い目で思いながら
このあと行き場のない怒りをどう消化するか考えながら着替える。
遠くでミルキくんの悲鳴が聞こえた気がするけど、聞こえなかった事にしよう。


――――

思ったより長くなってしまった。

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