ハンター | ナノ
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冷や汗の止まらないまま話を終え、部屋に案内された。手汗がひどい。
想像はしていたけど、その部屋はなんというかこの世界に来たばかりのあの日クロロさんに連れて行かれた一流ホテルの一室に劣らない程の部屋で、この一家の富豪ぶりが手に取って見れる部屋だった。


「す、すごいお部屋ですね…」
「ハナコ様、お荷物はこちらでよろしいでしょうか」
「はい。お願いします。」
「宜しければ、荷出しのお手伝いを、」
「あ、いえ!それは、結構です!自分でしますので」
「畏まりました。では何かありましたらお声掛けください。」


私専属で執事も付けて頂いた。なにこれなんの乙女ゲームなの。
無駄に広い部屋に圧巻されなかなか現実として受け入れがたいこの状況になんとかついていこうとはするものの一般人として生きてきた私の何かが邪魔をする為
疲れた身体を休めることを諦め荷物の整理をすることにした。


「ハナコ、入るよ」


ドアの向こうからイルミさんの声が聞こえる。
一応了承得るんですね、イルミさん意外です。


「あ、どうぞ」
「どう?足りないものがあれば用意させる」
「いえいえ、十分過ぎます。これ以上求めたら地獄に落ちそうな気さえします。」


私がそう引き気味にいうと、イルミさんはベッドに腰をかけた。


「それ、何してるの」
「え、ああ…スープの材料の食物を育てようと思って。」
「買えばいいのに」
「買ってもいいんですけど、自分で育てたほうが効果がある気がして」


そういって部屋の一角にさっき買い足した道具で野菜のための温室を作り始める。
部屋を好きに使っていいと言われたし、問題ないだろうこのくらい。
いくつかあるプランターに買ってきた土を入れる。
これが結構な重労働でよいしょ、とか声が出てしまう。
しかし、ここで「ふーん」と見ているだけなのがイルミ=ゾルディック。
ここで「手伝うよ」とかひと声かけるとかすると、
そこで恋が芽生えたりしてまた一つ乙女ゲームに近づくのだが。

…いやいやいや、ないない。

一瞬よぎった甘い妄想を頭を振って払拭する。
べ、別にそんなキャッキャウフフな展開望んでないですけど!
特にこの坊ちゃん相手に、そんな馬鹿な!バックに恐ろしいママが付いてるし!
美人なのは認めるけど怖すぎるでしょ。目は見たことないけど、え?あのキュイーンってやつは目なの?メガネなの?なんか監視してるんだっけ?
…いや、それ抜きにしても美人だけど。(鼻と口だけでわかるほど美人って…)
恐ろしい…まったくもって恐ろしい。

そういえば、さっきゾルディック家と顔合わせをした際、
奥様から「そう、アナタが」と生温かい目で見られた事が気がかりだ。
その生暖かい視線には、明らかに品定めするような意図が感じられた。
それが私の仕事についての品定めであれば問題ない。むしろそれでこそゾルディックって感じなんだけど…

まさか…あの執事(ゴトーさん)飛行船での出来事話したのでは…!
とイルミさんの後ろに立っていたゴトーさんに視線を送れば
こちらも何だか生暖かいなんとも言えない微笑みを返してきた。

え、やめて。そういうのほんとに困るから。
望んでないから!

これが私の憂いで済みますように…


「なに溜息ついてるの」
「…いや、土が重くて」
「そう」


あなたのお母様と執事がいらないこと考えていないか心配なんだよ、とは言えない。
口が裂けても言えない。自意識過剰なんじゃない?と言われて御終いである。
そして、それでも手伝わないイルミさんにやっぱりイルミルートは無い。
…そもそも無表情すぎて、なんか怖いし。


「なんか喉渇いたな。ハナコ、お茶入れてくれない?」
「…イエス、サー」


何故、執事に頼まない。執事も「私が…」とか言ってくれたけど
指名されちゃったし、あなたのためにも良くないと思うの、
これからお世話になるお嬢さん。


お茶を用意しながら再度イルミルートは無いと強く心の中で誓う私であった。



―――――

イルミさん、減点!

前サイトより転記(3/22)

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