ハンター | ナノ
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「お帰りなさいませ、イルミ様」
「お待ちしておりました、ハナコ様」


お辞儀した人で出来た道を歩いていく。
…こ、怖いなんか怖い


「どうもお世話になりますぅ〜…」
と絵に書いたような愛想笑いで必死にイルミさんの後を付いていく。
…ちょ、はや!いつも思うけどこの世界の男は歩く速度イカれてるよ!
股関節どうにかなっちゃうよ!足短いから!?私が悪いの!?
走ってるとは思われたくないという変な意地で何故か競歩で付いていく。
よ、余計に疲れる。


「先ずは親父のところ行くから…なんか呼吸荒くない?」
振り返ったイルミさんは肩で息をする私を見て
気持ち悪い、と淡々と話しわざとらしく私から仰け反るように身を引いた。


「ちょ…っ、歩くの早いん、ですよ。イルミさんがっ…」
「ハナコ体力落ちたんじゃない?」
「…ふぅ。最近は店でスープ作るぐらいしかしてなかったから」


標高が高いからか空気が薄い気がする。
もしそうであっても基礎体力が落ちたな、これ。
いや、飛行船の中でオーラ使いすぎたのかも。結構寝不足だし。


「念の修行も大事だけど、基礎体力をつけたほうがいいよ。うちにあるもの全部通常より重いし生活大変だぞ。うちの兄弟にもデブいるけどそうならないように頑張って。醜いの見るのは嫌いだからさ。ハハハ」
「…イルミさんはもっと女性の扱いを覚えたほうがいいですよ。嫁取り損ないますよ。
言っときますけどね、私は一般女性より重いです。なんとか隠してますけど残念ながら見えないところはすでに醜いですから。」
「ふーん。特に興味ないけど。」
「…ええ!そうでしょうそうでしょう!知ってますよ、あなたたちが私に興味ないのなんかずっと前から!」
「え…なんで怒ってるの。ちょっとホントに引くんだけどそういうの」
「べ、別にいいじゃないですか。ちょっとくらい私に興味もったって…」
「…」
「冗談ですよ、冗談。こうやってお仕事で声をかけて頂いただけでも身に余る光栄です」
「ハナコって、やっぱ馬鹿だよね」
「え…!なんで、ここで!?」
「一々リアクション大きいし。まぁいいや、親父の部屋もう着くから」
「…はい」




歩くスピードを落としてくれたイルミさんの後をついていくと間も無くイルミさんの足が止まる。ココ、とこちらをちらりとみると私の返事を待たずに部屋のドアをノックした。



「父さん、連れてきた。入るよ」
「ああ」
「あ、ちょっと…」


心の準備が、


私の希望など聞いてくれるはずもなくイルミさんの手によって
開かれた見るからに重い扉の向こうには


百獣の王がいました。


(ひいいいいいい…く、喰われる…!)


こ、怖い。この世界のスタートが既に怖いことだらけだったけど、
ここまでのプレッシャーは感じなかった。
そしてなに、あの犬、毛がない!ムキムキだし怖い怖すぎる。
やばいやばい、膝が笑ってる、腰が抜けそう。
思わず斜め前に立つイルミさんの服を掴んでしまう。



「どうしたの」
「いや、あの腰が抜けそうで、」
「そう」


私がそういえばイルミさんはシルバさんをちらりと見る。
すると少し体が楽になってほう、とひと呼吸することができる。

まさかこれほどだとは…。こんなに怖いなんて。
死ぬというイメージが簡単にできてしまうほどこの人のオーラは毒気が強い。
今まで私を育てた人たちはとても手加減してくれていたんだと
嫌というほど実感させられた。


「お前がハナコか。シルバ=ゾルディックだ。」
「は、はい!ハナコ=タナカです、宜しくおねがい、します」
「ふっ…まぁ、座れ。色々話を聞いてみたい」
「はい…」
「じゃ、俺は」
「…え!!イルミさん一緒じゃないんですか!?」
「え、俺居なきゃいけないの?」
「で、出来ればいてほしいですけど…」
「うーん、キルの訓練しようと思ったんだけど…」


こてん、と頭を横に倒して顎に手を添える姿はなんとも既視感すごいですけど…
無理だよ!いきなりこんなすごく怖そうな人と二人きりなんてどうかしてる。
何か失言があろうものなら瞬殺されそうだ。
あの犬グルルグルル言ってるじゃん、ヨダレすごい。
ひいい…私は食べても美味しくないよ!
…今この屋敷において唯一の見方はイルミさんだけなのに!


「イルミも座れ。キルなら今親父が見てるから問題ないだろう」
「ああ、そうなんだ。じゃ、いっか」
「ああありがとうございます」


イルミさんの存在をこんなに愛しく思ったのはこの世界に来て初めてです。ハハハと真顔で笑いながら念で防御しないと死ぬほど重い蹴りをしてくるイルミさんに死ねばいいのに、と心の中で何度願ったことはあっても、こんなに感謝することはありませんでした。


そんな一喜一憂する私をみて、百獣の王は喉を震わせ笑う。

「お前について興味があったんだ、ハナコ。色々聞かせてくれ」





―――――

シルバさん登場。
あの犬ハンパないな。

前サイトより転記(3/22)

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