ハンター | ナノ
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色々運び出せないもので生活に必要なものなどを買い足して
飛行船でククルーマウンテンに向かう。
着くまでゆっくりしようと窓の外を見ながら入れてもらったお茶を飲む事にした。


「そういえば、ハナコなんでクロロのところ出て行ったの」
「... ハンターライセンスを取ったからですけど。」
「そう。欠番が出たら蜘蛛に入るのかと思ってた」
「ぶっ!!!!…ゴホッ…ッはい!?」
「汚い」
「す、すいません。あ、ありがとうございます」


吹き出したお茶を素早く片付けに来る執事さんにお礼を言う。
ごめんなさい仕事増やしちゃって…


「だって蜘蛛の奴らハナコの事気に入ってただろ」
「そ、うですかね?」


事実でないにしろ第三者からそう見られていたことが少し嬉しかった。
思わず緩みそうになった口元に力をいれる。
っていうか、私嬉しいんだな。蜘蛛の事やっぱり好きだったんだ
少し前のことなのにすごく前に感じて、そんな自分に苦笑いをする。


「蜘蛛って凄く仲間意識が強いというか、排他的だから」
うちほどじゃないけどね、とイルミは紅茶を飲みながら言った。

確かに、何か異常なほどに繋がりが強い。愛情?仲間意識?…どちらにしても、部外者の私があそこに居れたのはとても不思議だ。今でも思い出して不思議に思うことがある。怪しい事この上ない存在だったのに。まあ、弱いしな…私。
それこそ私を育てることは育成ゲーム的な”暇つぶし”だったのだろう。


「だから出て行ったって聞いた時は意外だったよ」
「まぁ…ずっとお世話になるわけにもいきませんし、それに私じゃ力不足ですから…」
「まぁ、でもハナコ強くなったよね」
「へ?そ、そうですか?」
「うん。初めて見たときは野良猫以下だったけど今は熊くらいには見える」
「え、それすごく微妙な例えですね…」
「そう?仕事相手に選ぶぐらい評価してるんだけど」
「な、なんなんですか、イルミさん。やっぱなんか変」


私が照れ隠しでお茶を啜ると、イルミさんのカップが空になったのか執事がお茶を注ぎ
イルミさんは特に気にせず「気のせいじゃない」と言って続きを話す。


「素直にそう思ってるから言っただけだけど。蜘蛛を離れたあとも修行してただろ?」
「え、ええ、まぁ」


主に金稼ぎの為に毒作ったり、あわよくば除念出来ないか考える事をしていただけですけど。


「纏(テン)がすごく綺麗だからね。」


な、なんなの!?すごく恥ずかしい…

この世界で(前の世界でもだけど)こんなに褒められたことはない。
しかも相手はイルミ=ゾルディックだ。
世界がひっくり返っちゃう勢いでおかしい。


「…え、っとイルミさん?どうしたんですか?ホントに…」


あれ?イルミさんなんか顔赤くない?気のせいかな。
え、まさかそんなベタな事…


「別に何ともないけど」
「ちょっとおでこお借りしますけど、攻撃しないでくださいね?」


まさかとは思ったが、念のため前のめりになり
テーブルを挟んで向かいに座るイルミの額に右手を伸ばした。


「冷たい」
「あっつ!え、ちょっとイルミさんすごい熱あるじゃないですか!」
「ああ、そういえば少し暑い気がするけど…」
「何言ってるんですか!あ、執事さん体温計ありますか!?」
「必要ない。ハナコ大げさすぎ」
「イルミさんは黙っててください!ベッドルームはどこですか?はい、はい…お願いします。イルミさん!いきますよ!ほら、」
「え、めんどくさいんだけど」
「いいから早く!」


強引にイルミさんの手を引き案内される部屋に入り
強制的に布団に入らせ体温計を銜えさせる。


「うああああ、40度近くもあるじゃないですか!?どうやったらそんなに平気な顔してられるんですか!」
「うるさいな。ちょっと熱があるくらいなんともないし」
「はいはいはいはいわかりました。でもあんまり悠長なこと言ってると種無しになりますよ?子孫繁栄大事でしょ?ほらいいから寝てください。まだ家に着くまで時間があるんですよね?せめてその時間だけがおとなしく寝ていて下さい。あ、そうだスイマセン薬を…って、ゾルディック家に効く解熱剤ってあるんですか?」
「女としてどうなのその台詞」


いらないツッコミをするイルミを無視し
執事を見ると一応気休め程度のものはあるようだが、
今は持ち合わせがないとの返答が…。え!ゾルディック家の執事がなんてミスだ!
ちょっと大丈夫なの!殺されたりしない?船内のスプラッタは勘弁してね!
そして、気休めとは言えゾルディック家に効く薬あるんだね。私作る必要なくない?
そりゃどぎつい薬だろうし、一般人飲んだらどうなっちゃうのって感じだけど。


「えーっと…何かグラスと私の持ってきたバッグ用意してもらえます?あとキッチンお借りしてもいいですか?」


仕方がない。病人を放っておけるほど人間腐っていないし
熱があったとはいえ、さっき頂いた言葉たちがとても嬉しかったから
今回は料金外でしてあげましょう。

私の言葉に「はい、直ぐにご用意致します」といって執事は部屋を出て行く。


「何する気?」
「解熱、というか回復作用がある物をつくろうと思って。」


執事が持ってきてくれたバッグから必要なものを出し調合する。
実は水があればあとはどうにかなってしまうのだが
きちんと材料があったほうが効果が強くなり持続性も出る、ような気がするので
個人向けに作るときはものを使ったりする事が多い。


「…ハナコってさ、」
「ちょっと黙ってて下さい。集中しないといけないので。」


水と調合したものを混ぜて水見式の様な格好をし、発(ハツ)を始める。
イルミさんが言いたいことはなんとなくわかっていた。
他人に安易に発を見せるなって事だろうけど
イルミさんは私が他人であろうと知人であろうと殺すときは殺すし必要なければ殺さないと思う。もし殺される時があれば、私はイルミさんに抵抗する術を知らない。
一時的に逃げることは出来てもいつか殺されるだろう。
私はそんなに強くない。体も、心も。
だから別に構わないのだ。イルミさんに見られようが見られまいが、
今は熱を下げるために何をするか、それが大事なだけで。



―――――

蜘蛛の元を去ったハナコさんを素直に止められなかった事を
団長はプリンを食べながら後悔してればいいな、という妄想。

前サイトより転記(3/22)

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