ハンター | ナノ
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――――コトッ

「どうぞ。粗茶ですが」
「ん」

無残にも壊されたドアを見たときは
いっそのこと特製猛毒グリーンティーをお出ししようかとも考えたが
毒に耐性があることを思い出し
諦めて普通の紅茶を出すことにした。


「へー、おいしい。」
「…どうも」
「そういえばさ、ハナコって馬鹿なの?」
「は?」


いきなり何なんだ。
カップをソーサーに置き、イルミさんはじっとこちらを見て言った。


「だってオレから逃げられるはずないのに。」
「…ええ、はい。もうすいませんでした。ごめんなさい」
「別にいいけど。逃げても捕まえるだけだし」
「うう…」
「でもオレも暇じゃないから今度からそういう無駄なこと出来ればしないで」


暇じゃないなら来なきゃいいのに、とは言えず
私も紅茶を飲む事にした。

あ、おいしい。



「で、早速なんだけどさ」
「…はい…」
(嫌な予感しかしない!いやこれは予感ではない!確信だ!うわああ)


「ハナコ、毒作れるんでしょ?」
「よくご存知ですねええ…?」






***

「じゃあ契約成立。1週間後迎えに来るから準備しといて」

そういって彼は契約書を胸元にしまい爽やかに帰って行きました。
(せめて壊したドアは直して欲しかった…)

毒を売り出した時に、ゾルディック家を思い出さなかったいったら嘘になるが
そんなにでかい商売しようとは思ってなかったし…
(ひっそりやるつもりだったのに欲が出たのは認める)
まさか伝説の暗殺一家の耳に入ることがあるなんてとんだ気苦労だと踏んでいた。

どんよりと暗い気持ちになったが、もうどうにもならないと契約書に目を通す。
ゾルディック家の要望は簡単に言えば2点。

・新たな毒への抗体を作るための協力
・いざという時の薬に変わる物の製造(?)

新たな毒を作る者、つまり私のようなものがいるのは
ある意味彼らの脅威なのかも知れない。
強い念能力者が更に私の作った彼らに耐性がない毒薬を使った場合を想定すれば
今回の契約交渉は至極当然。
今後その毒で商売するな、と言われているわけではないというのはむしろ救いだった。

そしてもう一つ。そこらの毒に耐性がある彼らは普通の薬が効かない。
じゃあ強化系の誰かを使って回復させればいいじゃん!とも思うのだが
常備できる何かがあるのなら動きながら治せるしそれが一番手っ取り早いということか。
なんという仕事優先の思考なんだ。
このワーカーホリック共め!お前ら銀髪とかだけど実は日本人だな!
あ、でもイルミさんは髪黒かったか。


(怪我とか病気の時ぐらいおとなしくしてればいいのに)


さすが”一日一殺”を標語にしているビジネスライクなお爺様がいるだけある。
毒なんて作らなきゃよかった!!なんて思ってみてももう後の祭りだ。
だがしかし、さすがは伝説と呼ばれる一家。
報酬は目玉が落ちるほどの金額を提示された。
長期間とはいえ想像を絶する金額で、一般人に毛が生えた程度の生活をしていた私からするとこの金額はおとぎ話のような現実的ではない金額だった。

「こんだけあれば、地下に潜って悠々自適に暮らせるんじゃ…」
シェルター的な(?)物の中で、避難しつつ生活できちゃうなんて事が出来るんじゃ…なんて妄想してみたりしたが、最終的には金額なんて忘れてしまうほど熱心に交渉(脅迫)されて契約に至ったわけだが…

「クーリングオフしたい…」

そんなことを呟きながらキャリーケースに荷物を詰め込むのだった。



―――――


必ずしも地下が安全な世界ではないと
主人公はまだ気づいていない。(イルミ的な意味で)

前サイトより転記、修正(3/22)

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