ハンター | ナノ
閑話 [ 10/60 ]

それは、いつもと違う反応だった。
私が念能力は発生時に味によってオーラに色の違いが出る。
(純粋に辛いものは赤とか。)

特質系にせっかくなったのに
カリスマのカの字もない小銭を儲けるぐらいしか能がないこの能力に嫌気がさし
カリスマの名に相応しく特別なものを作ってやろうじゃないかと
店を臨時休業にして引きこもって悶々と調味料を作り続けた。
そして、1週間ほど経った頃だったか何かいつもと違う反応が出た。
赤から青に変わりまた赤に戻ったり、いつもとは明らかに違う反応だ。
できたものを舐めてみると辛い様な甘いようなスースーする、いやピリピリ?
反応がハッキリしていなかった為か味もなんだか中途半端な味になった。

正直微妙な味だったが、それでも今までと違う反応がなんだか嬉しくて
気合を入れてもう一度発をする。できる限りの念を込めて。
するとオーラの色は紫色になりその色を保つように念を込め続ける。
最終的に無味無臭の透明な液体ができた。

「―はぁ、ッこれ、なんだろ…?はぁ、はぁ、きっつ…」

通常の念調味料を作るときとは比べようがない程
オーラを消費してしまった。

「駄目、だな…はぁ、ちゃんと修行しないと……ふぅ」

思わずソファに倒れこむように座り、息を整える。
額の玉のような汗を手の甲で拭い
カップに入った冷えたコーヒーを喉に流し込む。

すごく疲れたが、すごく達成感がある。
誰かに自慢したい。どうしようか…
あ、そうだ!メンチに自慢しよっと…

「携帯、携帯…」

私が言ったメンチとは、勿論”あのメンチ”である。
後にハンター試験の試験官となり全員失格にしちゃう人である。
変わったヘアスタイルをしている彼女は言うまでもなく美食ハンターで
巷で有名になった私のスープを飲みに来た事がきっかけで
何故か友人関係になったのだ。


『はいはーい』
「あ、メンチ?」
『久しぶりねー、最近店行けてないけど元気なの?』
「元気元気。メンチは?相変わらず食材探し?」
『元気よ!あ、そうだ。今結構近くまで来てるから久しぶりに寄ろうかな、アンタんち』
「まじで!やったー待ってるよ!あ、私もね、今新しい”調味料”が出来たところなの」
『へぇ!どんなのが出来たの?ハナコの調味料は天下一品だからね、楽しみだわぁ』
「…あ、出来たのが嬉しくて味見してなかったわ」
『アハハ!何それ、ハナコらしいっちゃらしいけど!』
「へへ、ちょっと味見してみよーっと。なんか無味無臭なんだよねー」
『ふーん、水みたいなものかしら?』



電話を片手にグラスを揺らしてみる。
カーテンから漏れる光を浴びてキラキラと光る液体X。
なんとも怪しい。


「いやそれにしては、なんかとろみがあるんだよね…」
『とろみ…なにかしら』
「毒…だったりして!」
『アハハハハ!ありえるわね!毒があるものはおいしいっていう話もあることだし』


なんて、お互いに冗談を言いながら
なにが面白いのか涙を流しながら笑う。
おそらくこの時私は寝不足などによるナチュラルハイというやつで
あまり正常に頭が働いていなかったと思われる。


「ま、まぁ、ちょっと舐めてみるね」
『うん』


一旦グラスを置き、目尻に溜まった涙をぬぐって
小指を液体にちゃぷんと付ける。
やっぱりなにかとろみがあって、何だか触れた指先が少し暖かくなった?

ペロ


ガタッ―


「―ッ…あ、…ごほっ」
『ちょ、どうしたの!?ハナコ!?」
「や、ば。これ…喉痛…い…ッ…」
『え?何?ハナコ?』


「こ…れ…、ッ〜毒…ごほっ…だ、わ…。」


そこから意識を失い、記憶がない。
メンチと電話で話していたことが幸いし
私はメンチが手配してくれた救急車によって1時間後には病院に搬送されていた。

なんと私は猛毒を作ってしまったらしい。


1週間は意識が戻らず
目が覚めて更に1週間は自分で動くことや食べることができず
3週間目にやっと普通に病院食が食べられるほどに回復。
退院まで4週間も要した。
(実は止める病院側に無理を言って逃げるように退院した)
一般人であったら即死の可能性があったとかなんとか。
よかった!念能力者で!(そもそも自分で作った毒だけど)

意識が戻ってから病院側からどんな毒でどんな経緯で口にしたのかを
すごい勢いで問い詰められたが、ハンターライセンスでそのへんは無理やり回避した。
(ハンターライセンスすげえ!)


「いやーお騒がせしました」
「ほんとよ。何言っても反応がないから急いで救急車手配したわ」
「まさか、毒作れちゃうなんて思わなくてさー?」
「そりゃそうだけど。ていうか、アンタ自分の作ったものは自分に効かないんじゃなかった?」
「あー、うん。そうなんだけど、毒は別みたい。」
「厄介すぎるわよ…あんたの念…」



―――――

メンチとはお茶友達

前サイトより転記、修正(3/22)

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