その翌日。
深夜が贈り物をしようとしている相手―――すなわち志賀白夜が仕事で疲れてすっかり眠ったころに、新はこっそり彼女の部屋へと訪れた。
幸い彼女は寝ておらず(前もって新が深夜に起きているように言っていたからであろうが)、自分が拾ってきていた黒猫と戯れていた。

「お楽しみ中のところ悪いんだけれど深夜、少年が寝たことを確認できたよ。さあ、今から厨房に急ごうか」
「夜に作るの?」
「そうでもしないと、厨房を借りられないだろう。それに見たところ、深夜はどちらかと言うと朝早く起きて作るより夜に作る方がてきぱき働けそうだからね。普段動いているのが夜だから、というもの勿論だが、君は朝があまり得意ではないだろう?」
「…確かにそうかも」

深夜は自分の行動を顧みて深く頷いた。心当たりがあるのだろう。
新もその様子を見て、歯を見せて笑い深夜を厨房へと連れて行くため彼女の腕を引っ張った。

「善は急げだよ、深夜」


◇ ◇ ◇


普段は白夜がここに立っており、客に自慢の手料理を振る舞うのだが、今回は普段接客中に厨房には立たない二人が慣れないエプロン姿を見せていた。
新はせっかくだから見た目から入らないとね、と用意していたものである。深夜は前から自分だけのものを作っており、料理自体に力を入れることなどなかったため、エプロンは持ち合わせていなかった。よって、深夜のエプロンも新が独断で選んだデザインのものになっている。


prev|backnext


(以下広告)
- ナノ -