「『蜜香は何より、恵介が近くにいるこの日々を幸せだと思った。近くにいるからこそ感じ取れる喜び、近くに入るからこそ感じ取れる彼の温もりが、どうしようもなく愛おしかった』」
「それって……」
「ああ、【六月の花嫁】だ。屋烏夜鷹も、もしかしたら俺達と同じような状況を体験していたのかもしれねえな」
「……ふうん、随分詳しいのね?」
「そりゃそうだ、屋烏夜鷹は」

 屋烏夜鷹は。

「出版社が同じ、俺の友達だからな」
 
彼女のために物語を書く、もう一人の俺だから。


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