水中の中で呼吸も出来ず意識を失った俺は、うっすらと夢を見ていた。

それは普段と変わらない日常の夢で、いつも通り俺は外にも出ずひたすらディスプレイと顔を合わせていた。隣には幼馴染であるヒヨナもいて、何もいつもと変わらない穏やかな生活の一部分だった。彼女がなんて言っていたかはよく覚えてはいないのだが、いつものように俺に向かって微笑んでくれていたような気がする。
こうやって言ってみるとどうも走馬灯のように見える。実際水の中で息が出来ていないのだからこのまま行ったら普通に呼吸困難で死んでしまうのだが。
こうして外に出ることが億劫になってしまったのはいつくらいのことだろうか。昔もこんなにインドアな人間だったか覚えはない。まあ少なくとも環境も相まって外ではしゃぐタイプではなかったと思うが。
親父曰く「お前はやるべきことから目を背けている。お前が見るべきは画面の向こうの虚構ではなくそれよりも明るい現実だ」と。
俺のやるべきことと言うのは僧の修行のことだろうか。それとも僧になる気がないなら、せめて何かしらのきっかけを経て社会に出て少しでも世界を学べということだろうか。多くは語らない親父からはその真意をくみ取ることは出来なかった。

俺が部屋の世界だけを見ているような人間ではなく、まっとうな人間にでもなれば、俺はまだあの暖かい日々に戻ることが出来―――

「〜〜〜ッ! 痛え!」


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