俺の重々しい思考はそこで途切れた。というか無理やり途切れさせられた。尻がひりひりする。どうやら硬い何かに臀部が強く当たったようだ。
コンクリートのようなものか? さっきまで酸素が足りなかった俺は意識があまりはっきりとしておらず、視界がしっかりするまでしばらく時間がかかってしまった。

よく見てみると、そこは地下牢獄のような場所だった。俺がどうやって落ちてきたか全くわからないのだが(某マンガの通り抜け出来るフープみたいなやつか?)俺もどうやらその牢獄の中に全自動の何かしらの仕組みで入れられてしまったらしい。
それほど広くない空間には、思っていたよりも整っていた環境があった。食事は分からないが、空調は効いているようでお手洗いも用意されていた。
そして何故か俺と一緒にいた壁の端にもたれ掛かっていた男―――

「よお環、久しいじゃねえか」

それは俺が住む彩行寺に時折顔を見せる男―――東鳥潮(ひがしどり うしお)だった。

ニヒルに笑うその表情に、深くかぶった帽子、スラッとした体型、男にしては長めの髪の毛を一つにくくっている彼は、自分がどのような状況に置かれているかも分かっていないのか、むしろこの状況を楽しもうとしてるのか俺にはまったくわからなかった。

―――というかそもそもこの状況がわからないから俺にはどうしようもないのだが。

「何そんな呆けた顔してんだよ、もっとシャキっとしろ」
「い、いやいやよく考えてみろよ、俺たち捕まってるんじゃねえの!? 何でそんなに冷静なんだよ!?」
「……どうだってよくね?」
「よくねえよ!!!!!!」

大声を出して思い出したが、そう言えば俺と一緒に水の中に落ちたヒヨナが俺と一緒にいない。こんなことになるなら手を繋いだまま離さなければよかった。今頃ヒヨナも俺たちと同じように牢獄の中に閉じ込められているのだろうか。それともヒヨナだけ別の空間にいて、とか……?
とりあえず無事であることを祈るのだが。


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