「ところでお前のその服、どこで買ったんだ? 似合ってるじゃないか」
「へっ!? あ、ありがとう、ございます……、これは、友人から貰ったもので……」

突然の話題転換と思わぬ質問に言葉がつまり、ほのかに顔を赤くする美那弥とは対照的に、紫織は何ら変わらない様子で平然と美那弥に言う。

「髪型もいつもとは違うな、見ていて新鮮味がある好みの髪型だ」
「そ、そんな、異性の人に外見とか褒められるのって、こう、何か恥ずかしいです……」
「それが嘘でもか?」
「……からかったんですか」
「何言ってるんだ、俺は本心から物事を言う男だぞ?」
「それこそ嘘です!」

美那弥はいつも紫織のからかうような嘘にいつも翻弄されていた。
それこそ突拍子もない嘘から、本当にそうなんじゃないかと思わせる嘘まで様々だ。
それでも本人いわく、命が懸かっているときは嘘を吐かないらしい。それが実際本当なのかどうかはその場面を見たことがないので、美那弥はまだわからないが。

「それでもこの髪飾りは、しおりさんから貰ったものなので付けておこうかな、って」
「……そうか、嬉しいよ、ありがとう」
「それに、結構これ気に入ってるんですからね。美那弥には赤色が似合う、って言ってくれて、あの時はすっごい嬉しかったです」
「どういたしまして」

紫織は礼を言いながら店に入り、待ち構えていた男の定員に「二名で予約していた藤堂ですが、」と言葉を続ける。
定員が了承すると、予約席である周りより少し豪華な席へと案内された。本当にここで会っているのだろうか、と庶民派である美那弥は戸惑う。二名だけなのにやけにデザインが凝っている。
予約したのは紫織なので、ちゃんと上座に座ってもらおうと思い上座に誘導した。美那弥も続いて下座に座る。
そして先ほど話題に触れた髪飾りについて、少しだけ過去を思い出す。

『みなみ、これお前にやる』
『? なあに、これ? きれいな赤い丸……』
『かみの毛、くくるのにちょうどいいのを見つけたから、あげる』
『ほんと!? やった、うれしい!! しおり、ありがとう!!』


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