一周年企画 | ナノ
「二人はキャラが被りすぎです」
突然指を差されそんな言葉を投げかけられたなまえと狗神はこひなに目をやった。
狗神と一定の距離を保っているなまえとそれに少し不満を持つ狗神の視線が数秒合わさる。
コックリさんが「いきなりどうしたんだよ、こひな」と聞けばこひなはふむと手をおろした。
「だから、なまえさんと狗神さんキャラ被りすぎじゃないですか?」
「そうかー? おじさんは性格とか真逆だと思うけどな」
昼から酒を飲みまくっている信楽は確認するかのように二人を交互に見やる。やはり似ているところなどなく首を傾げた。
しかしこひなはその回答は予想済みだったかのように再度言葉を発する。
「被っているところその一。二人とも敬語です」
「言われてみればそうですが……私の人への敬語はもう癖みたいなものですし」
「というかもはや今更では?」
話し方というのは一日二日でどうこう出来るものではないため変えようがない。
既にこひなは指摘を無視することに決めたのかいくつか似ている点をまとめて挙げ始めた。
「そして狗神さんに関しては記憶にありませんが市松が助けたという理由で市松の家に住んでいる、市松が好きで、しかも物の怪……。なんですか、被りすぎです」
「っこ、こんなに似ていると逆に興奮いたしますね……!」
「俺今狗神のセリフにすごい鳥肌たった」
コックリさんはサッとなまえを自分の背に隠し狗神の威嚇の視線にも動じずスルーを決め込んだ。
だがいざこうしてこひなの言う似ている点を述べてみれば意外と出てくるものである。これが狙っていないというのだからおかしな話だ。
「そして我が君となまえ様が私を愛してくだされば更に共通点が増えてしまいますね……なんて素敵なハッピーエンド……!」
「愛す……っ!?」
「関係のない市松をそこに加えないでくれますか?」
狗神の願う末来が来るのはなまえ次第だろうとこひなは思ったが口には出さない。
またおせっかいにも一歩踏み出せないときになまえの背中を押してあげればいいのだ。
自分はいつからこんな世話焼きの人形になったのだろうかと呆れのため息をつく。
「じゃあ逆に似てないとこってどこだ?」
ふと信楽は気になったことを呟いた。それは全員の耳に届いたようでコックリさんは瞬時に返事を返す。
「そんなの一番最初に言った性格だろ……。狗神は基本オープンでうるさいけどなまえは恥ずかしがりな性格だし」
「なまえさんのその性格は狗神さん男バージョンのときだけに発動されるのですがね」
「……そうなんだよなー」
「何かこひなちゃんとコックリさんの小さい声から私の名前が聞こえたのですが……」
「なまえさん。とりあえず性格だけは直しませんか?」
「え!?」
突然言い聞かせるように肩に手をおかれたなまえはただ驚愕の声をあげた。
―――
「なまえ様。お時間よろしいですか?」
「あ、狗神さん。大丈夫ですよ、どうかしました?」
女の姿でなまえの部屋へ訪れた狗神は尻尾を左右に振り、許可をもらったためなまえに近づき用件を伝えた。
「なまえ様と外へ出たいなと思いまして」
「構いませんが……あれ、散歩当番は最近ずっとコックリさんですよね?」
「いつも狐殿に無理矢理連れていかれる散歩などではなく、私がなまえ様のお隣を歩きたいので一緒にどうかと」
若干コックリさんが悪者になったような言い方が気がかりだったが、なまえも外出するのは好きだ。断る理由もなく頷けば、狗神は嬉しそうに更に尻尾を大きく振った。
行きましょうと狗神に手をひかれ驚いたものの笑顔でついていく。
途中それを見かけたこひなは、似ているところはまだあったなと無表情で二人を見送った。
――ちゃんと、思いあっているではないか。
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