2.名前をつけました
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「そういえば、白蛇さんのお名前を聞いていなかったのです」
「ああ、確かに。名前がないと生活に不便だもんな。教えてもらえるか?」
『名前、ですか?』
はて、と首を傾げる少女にこひなとコックリさんは顔を見合わせた。
まさか、とこひなは名前は何でせうか?ともう一度質問をしてみる。しかし少女は首を傾げ困った顔をするだけで表情などが変わる様子は一向に見られなかった。
「……名前ないのですか?」
『ず、ずっと白蛇白蛇と言われてきてたので、名前があったのは覚えてるんですが、その名前が何かとまでは…』
「なんと」
「いや名前を忘れるとかかわいそうすぎだろ!」
こうして、こひなとコックリさんの白蛇さんの名前を決めよう大作戦が始まったのだ。
―――
コックリさんが真剣に名前の案を考える中で、一番に考え付いたのはこひなだった。
「白蛇だから白さんなんていいと思います」「そのまんますぎだろ」「では蛇さん」「なんだか悪意がこもってる気がするからダメ」「めんどくさいのでもう白蛇さんでいいです」「こひなは白蛇がこの家に憑くの実は反対だったりするのか!?」「何を言ってるのです?反対なら頭を撫でたりなどしません」「ご尤もです!」
目の前で繰り広げられる会話に少女は楽しいのか微笑みながら正座している。
「もういっそのこと"かわいい名前"とかでググりましょう」
「うわっ!一番愛のないことやろうとしてるこの子!!」
「…コックリさん。そんなに突っ込んで疲れないのですか?」
「突っ込みを強要させられてんだよこんちくしょおおおお」
こひなはコックリさんが自分に遊ばれていたことで泣いている隙に、少女の元へ近づいた。
トコトコとこひなが白蛇の目の前に行くと、どうしましたかと声をかけられる。
座っていることで丁度いい高さになっている少女の頭を撫でながらこひなは口を開いた。
「白蛇さん」
『えっ?』
「よろしくなのです、白蛇さん」
白蛇。それが自分につけられた名前を指すのに気付いてきょとんとしていた顔がみるみる嬉しそうにきらきらとした顔に変わっていく。
未だに泣いているコックリさんを横目にすっかりお馴染みになったなでなでをし続けるこひな。
名前をつけてあげると、言ったから。人形はこみあげてくる感情にメンテナンスが必要かとふと思う。
そんなこひなの気持ちとは裏腹に白蛇の少女、改め白蛇は名前を手に入れ目を細めて喜んでいた。
「酷いぞこひなぁあああああ」
泣きわめく狐を宥めたのは、それから少し経った後のこと。