1.巻き憑きました
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「なるほど。先ほどの白蛇さんでしたか」
『市松こひな様に助けていただいた白蛇です』
どうやらこの少女の正体はこひなが助けたあの白蛇のようで、彼女は物の怪の類に入るものらしかった。
危ない感じの大人に追われて逃げていたら傷つき、弱っていたところをこひなが助けてくれた、というわけだ。捕まっていたら確実に危ない方向へと進んでしまうところだっただろう。
「というか、人間の姿になれるのなら人間になって逃げればよかったんじゃないですか?」
『あの人たちの前で人間になったときのことを考えてみてください』
「更なる物珍しさで白蛇さんが危ない目にあってしまいます」
しかしこの白蛇、物の怪だったらしい。どこかで諦めきれていず、0カップメンだったということかとふうっと息を吐いた人形は、少し落胆したように見えた。
落ち込んでいることなどいざ知らず、そんなことよりと少女はこひなへ笑顔を向ける。
『市松こひな様、私は貴女様に感謝しています。物の怪故簡単に死ぬことはありませんが、あのままでは危ないところでした』
「いえ。市松は手当てをしただけなので」
『私を怖がらずに優しくしてくださったのは市松こひな様だけです。何とお礼を申せばいいのか…』
「お礼はいいのでカップメンを」
こひなはまたも腕に絡みついてきた白蛇の少女を見て、自分の直感が当たったと確信した。
『市松こひな様、大好きです! これからは貴女様の元でこの恩を少しずつ返していきたいと思いますねっ』
「……あー」
蛇のように、市松こひなは巻きつかれてしまったようだ。否、巻き憑かれたようだ。
自分より少しだけ大きい白蛇の少女。こひな家に、新たに仲間が加わったのだった。
「こひなー、ただい…まああああ!? だ、誰だそいつ!」
「……コックリさん」
白蛇は、買い物袋を持ったまま驚愕の表情を浮かべているコックリさんに呑気に挨拶をして、こひなに頭を何度も擦り付けた。
何も知らないコックリさんはこひなを怒ればいいのか、少女をこひなから離せばいいのか分からず数分間慌てていた、とこひなは語る。